日本健康開発雑誌
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原著論文
レセプト情報・特定健診等情報データベース( NDB )の臨床研究における名寄せの必要性と留意点
久保 慎一郎野田 龍也明神 大也東野 恒之松居 宏樹加藤 源太今村 知明
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2017 年 38 巻 p. 11-19

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抄録

背景・目的 レセプト情報・特定健診等情報データベース (NDB) に含まれるレセプトデータは1カ月単位で発行される診療報酬請求データであり、患者単位での分析を行うには2種類の個人情報由来のIDを用いて「名寄せ」と呼ばれる紐づけ処理が必要であるが、その処理法についての十分な検討は未だなされていない。本研究では、NDBにおける2種類のIDが変化するパターンを整理し、名寄せを行う上での留意点を明らかにした。

方法 2013年度のNDBデータを用い、名寄せの支障となる過誤の整理と、過誤が発生する件数と頻度の検証を行った。

結果 2種類のIDはライフイベントによって変化するため過誤が発生しやすい。扶養の同性双子や、同性同名・同一出生日・同性患者が存在した場合、別人物を同一人物と誤認する第一種過誤が発生しやすい。また転職や離職、定年等で「保険者番号」「被保険者証等記号・番号」が変化し、養子や結婚による改姓や医療機関による氏名の表記ゆれによって同一人物を別人としてしまう第二種過誤が発生する。1年間の追跡だけで概ね11%のIDが変わる可能性があり、コホートから脱落する。追跡対象者の0.8%はID1とID2が同時に変わる可能性があり、1年あたり1%程度の対象者は追跡が困難な状況となると見積もられた。

考察 名寄せの問題点として、2種類のIDがライフイベントに応じて変化することと、名寄せキー変数に乏しいことが挙げられる。名寄せ精度の検証については匿名でも同一人物であるコホート集団があれば、教師データとなりうる。今後、名寄せの精度を向上させる必要がある。

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