日本健康開発雑誌
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原著論文
山形県庄内地域における入浴事故の実態と気温との関連性について
松田 友子田中 敦松田 徹阿彦 忠之川崎 良
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2017 年 38 巻 p. 28-37

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抄録

背景・目的 全国で入浴事故死は年間約1.4万~1.9万人と推計され、冬期、自宅、高齢者で多発しているとの報告がある。入浴事故の予防啓発が行われてはいるが十分に浸透しているとは言えない。本研究は、山形県庄内地域の救急情報を用いて気候関連因子と入浴事故発生日との関連を明らかにし、その関連に基づいた危険予測モデルの作成を目的とした。

方法 山形県鶴岡市・三川町における2009年11月から2013年4月までの救急出動事例(不搬送事例を含む)のうち、入浴行為の際または入浴に起因して発生した事例の情報を用いて解析を行った。ロジスティック回帰モデルにて気温との関連を明らかにし、平均、最高、最低気温それぞれにおける閾値を求め、スコア化し予測モデルを作成した。

結果 該当地区の入浴関連の救急出動事例は451件だった。全体で平均気温が1℃下降する毎に入浴事故のオッズは1.05(95%信頼区間1.03–1.06)と高くなった。冬期に限定して入浴事故発生日を判別するための平均、最高、最低気温における閾値を求めると、それぞれ<7.4℃、<7.1℃、<1.2℃となり、この全てを満たす日はいずれも満たさない日に比べてオッズ比が2.13(95%信頼区間1.44-3.15)と高かった。平均気温と最低気温の基準を満たした場合、同2.03(1.39-2.97)だった。

考察 本研究により気温が低下することで入浴事故発生が多いことが確認され、平均、最高、最低気温という3つの気候関連因子における閾値を明らかにした。冬期では全ての気温が閾値以下の該当日は入浴事故が2倍以上起きており、「入浴事故危険日」である可能性が示唆された。

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