日本健康開発雑誌
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助成研究
入浴習慣が課題依存性の前頭前野賦活化に与える影響の解明
大篭 友博
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2021 年 42 巻 p. 105-112

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抄録

背景・目的 前頭前野は系統発生的にヒトで最もよく発達した部位であり、認知、記憶、注意、動機付けなどの機能を担う。近赤外分光法では、脳血流変化を非侵襲的に測定することによって、課題実行時の神経活動を可視化できる。一方でバスタブ入浴習慣には、血流を改善させる効果がある。これらのことからバスタブ入浴習慣は、課題依存性の前頭前野賦活化を促進する効果が期待されるが、入浴習慣と脳血流動態の関連性は明らかにされていない。

方法 本研究で、我々は若齢成人を対象として2週間のシャワー浴、2週間のバスタブ浴を行い、課題実行時の前頭前野脳血流の変化を測定した。用いた課題は、仮名ひろいテスト、ウィスコンシンカードソーティングテスト(WCST)、3バック課題である。

結果 開眼安静状態に比べて、課題実施中には前頭前野の血流が上昇した。2週間にわたってシャワー浴を行うと、仮名ひろいテスト、WCST実施中の前頭前野脳血流の上昇レベルは低下した。その後、2週間にわたってバスタブ入浴を行うと、これらは一部回復した。入浴習慣の改変に伴う脳血流の変化と課題成績の変化を相関解析したところ、仮名ひろいテストの正解率と脳血流の変化に高い正の相関があった。意外なことに、3バック課題の正解率と脳血流の変化には負の相関があった。

考察 これらの結果から、入浴習慣の変化に伴う課題依存性の脳血流変化は、課題成績と深い関連性があると考えられる。

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