環境科学会誌
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一般論文
ラットへの水銀蒸気曝露による水銀の簡易個人曝露モニターの有効性評価
丸本 倍美丸本 幸治野田 和俊
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2021 年 34 巻 6 号 p. 247-255

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抄録

人力小規模金採掘(Artisanal and Small Scale Gold Mining,以下ASGM)は,地球上での人為起源の水銀の最大の排出源である。現在までに,安価で容易に気中水銀濃度をモニタリングするため,水晶振動子マイクロバランス(Quartz Crystal Microbalance,以下QCM)法を利用した気中水銀の簡易測定装置(QCM-Hg)の開発が進んでいる。本QCM-Hgを用いてはWHOが規定する作業環境基準である1 µg/m3程度における有効性の検討がなされてきた。しかしながら,実際のASGMでは基準値を上回る気中水銀濃度下で作業することが多く,健康被害につながる可能性が大きい。そのため,個人の曝露量や生体蓄積量を把握できる個人曝露モニターの開発が急務である。QCM-Hgは小型かつ軽量のため,そのモニターへの応用が期待されているが,QCM-Hgの測定値が実際の生体への曝露量を反映しているのかは明らかになっていない。そこで,個人曝露モニターとしての有効性を,ラットを用いた動物実験により検討した。併せて,QCM-Hgの1 µg/m3以上における有効性を検討した。その結果,ラットにアクティブ方式のQCM-Hgを装着し,水銀蒸気曝露実験を行ったところ,QCM-Hgの振動数および素子への水銀吸着量と,曝露後のラットの諸臓器中の総水銀濃度との間に相関がみられた。ラットにパッシブ方式で実験を行うと,QCM-Hgの振動数はラットの動きや呼吸による水蒸気により変動することが分かった。今回の研究により,QCM-Hgを個人曝露モニターとして利用する際にはパッシブ方式は適さず,アクティブ方式に適していることが示唆された。

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