日本健康開発雑誌
Online ISSN : 2434-8481
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42 巻
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巻頭言
総説
  • 上岡 洋晴, 町田 怜子
    2021 年 42 巻 p. 3-11
    発行日: 2021/06/16
    公開日: 2021/06/16
    [早期公開] 公開日: 2021/01/21
    ジャーナル フリー

    背景・目的 日本の農業においては高齢化と後継者不足が深刻になっている。その背景には、身体的負荷が高く、健康問題が生じていることも理由の1つになっている。本研究は、日本の農業従事者における慢性的な運動器疾患に関する実態の情報を明らかにすることを目的とした。

    方法 日本の農業従事者における運動器疾患の発生状況に関する報告に関して、厚生労働省と農林水産省の各種統計や全国共済農業協同組合連合会における統計を調べた。また、同様に医中誌Webによる検索と、J-STAGEを介して日本農村医学会の雑誌を調査した。

    結果 農作業中の死亡に至る事故や労働災害となる疾病はあったが、慢性の運動器疾患の有病率などの実態を示す統計資料はなかった。観察的疫学研究としての論文もなかった。これは農山間地域における研究論文中に含まれているためであり、職業としての農業従事者で層別したデータを抽出しなければならないことが示唆された。

    考察 農業従事者において慢性の運動器疾患の情報の一元化と情報公開は、その予防・軽減のための教育啓発に繋がり、就農者数と国内生産量を維持する一助になると考えられた。

原著論文
  • 冨永 隆生, 小川 暁郎, 清水 厚志, 渡邉 和孝, 渡邉 和晃
    2021 年 42 巻 p. 15-20
    発行日: 2021/06/16
    公開日: 2021/06/16
    [早期公開] 公開日: 2020/08/04
    ジャーナル フリー

    背景・目的 高血圧症は脳梗塞や心筋梗塞などの合併症を引き起こすケースが多く日常より予防的に摂取可能な機能性食品などの開発が推奨されている。高血圧症にはアンジオテンシンⅡの合成酵素であるアンジオテンシンⅠ変換酵素(ACE)を抑制する治療が行われている。本研究では降圧作用を示す大豆、及び米ぬか発酵物(OE-1)よりACE阻害活性を有するペプチド含有画分を分離、精製し、さらにペプチド配列の解析を行った。

    方法 OE-1より疎水性クロマトグラフィー、および逆相クロマトグラフィーを用いACE阻害活性を有するペプチドの分離を行った。単離した各ペプチドからペプチドシークエンサーによりアミノ酸配列を解析した。

    結果 ACE阻害活性を示す5種類のジペプチド、並びに5種類のトリペプチドが得られた。各ペプチドのアミノ酸配列は、ジペプチドがAY(Ala-Tyr)、GY(Gly-Tyr)、SY(Ser-Tyr)、NY(Asn-Tyr)、及びDY(Asp-Tyr)、一方、トリペプチドがYGS(Tyr-Gly-Ser)、YQG(Tyr-Gln-Gly)、SYN(Ser-Tyr-Asn)、YDQ(Tyr-Asp-Gln)及びYNP(Tyr-Asn-Pro)であった。ジペプチド類のAY、GY、SY、NY、およびDYのACE阻害活性(IC50値)はそれぞれ、30.5mM、184mM、96.7mM、32.6mM、及び18.3mMであり、トリペプチド類のYGS、YQG、SYN、YDQ、及びYNPはそれぞれ1070.1mM、746.7mM、1778mM、1736.2mM、及び484mMであった。

    考察 OE-1の降圧作用には数種類のACE阻害ペプチドが関与していることが推測された。これらのペプチドは総合的にはたらいて降圧作用を発現していると考えられた。

  • 伊藤 要子, 石澤 太市, 多田井 幸揮, 綱川 光男
    2021 年 42 巻 p. 21-30
    発行日: 2021/06/16
    公開日: 2021/06/16
    [早期公開] 公開日: 2020/08/19
    ジャーナル フリー

    背景・目的 我々は、より健康的な入浴法を目指し、Heat shock protein 70 (HSP70)を日常の入浴で高めるHSP入浴法を確立してきた。しかし、生活意識の変化から入浴をシャワーで済ませる機会が増えている。本研究では、日常の入浴として全身入浴またはシャワー浴を行っている人に入浴による温熱刺激を与え、HSP70、体力指数および気分プロフィール検査などの主観評価への影響について比較し、HSP入浴法を検討した。

    方法 健常男性11名を日常の入浴法として40℃10分の全身入浴群とシャワー浴群に分け、5日間の日常入浴後に試験入浴として40℃15分の全身入浴と保温を実施し、体温(舌下温度)を測定した。また、試験入浴前、1日後、2日後にHSP70発現量、体力指数および気分プロフィール検査、気分・感覚状態のアンケートを実施した。

    結果 全身入浴群において、試験入浴中の体温はシャワー浴群に比し有意に上昇し、HSP70は試験入浴前に比し有意に上昇した。また、疲労感や筋肉痛はシャワー浴群に比し有意に軽減し、気分プロフィール検査POMSの混乱は日常入浴前に比し有意に低下した。

    考察 全身入浴を継続することで、温熱刺激に対する感受性が高まり、HSP70の有意な上昇、疲労感の軽減、気分状態を良好にし、心身の健康に良い影響を及ぼすことが示唆された。また、日常の全身入浴の継続後の試験入浴40℃15分入浴は、従来のHSP入浴法である40℃20分の入浴時間を5分短縮する、新しいHSP入浴法となり得るものと思われた。

  • 冨永 隆生, 小川 暁郎, 清水 厚志, 渡邉 和孝, 渡邉 和晃
    2021 年 42 巻 p. 31-36
    発行日: 2021/06/16
    公開日: 2021/06/16
    [早期公開] 公開日: 2020/08/11
    ジャーナル フリー

    背景・目的 アルツハイマー病(AD)は認知症の代表的疾患であり、発症原因の一つに老人斑の主成分であるアミロイド-β(Aβ)の蓄積と活性酸素を伴った神経毒性が考えられている。本稿においてAD発症に関わると考えられるin vitro試験により大豆発酵エキス(NT)の効果について検討した。

    方法 大豆摩砕物を納豆菌で発酵させ、エタノール抽出によりNTを製造した。β-セクレターゼ活性、及びAβ凝集は各定量キットにより測定した。PC-12細胞を神経細胞に分化させAβ、又は酸化ストレスによる細胞障害をMTTアッセイにより判定した。アセツルコリンエステラーゼ(AChE)阻害活性はヨウ化アセチルチオコリン基質を用いた発色反応により測定した。PC-12へのNT添加による神経突起伸長作用について検鏡下で観察した。

    結果 NTはAβの生成酵素であるβ-セクレターゼを阻害し、Aβの凝集を抑制した。また、神経細胞に分化させたPC-12へのAβ凝集体、又は酸化ストレス負荷による細胞毒性を抑制した。さらにPC-12の神経突起伸長作用、及びアセチルコリンエステラーゼ阻害作用が確認された。

    考察 NTによるin vitro 抗アルツハイマー作用はADの予防、治療において有効性を発揮するものと期待される。

  • 倉重 恵子, 曽我 俊博, 横山 和仁
    2021 年 42 巻 p. 37-48
    発行日: 2021/06/16
    公開日: 2021/06/16
    [早期公開] 公開日: 2020/11/24
    ジャーナル フリー

    背景・目的 集中力は、知的労働生産性や運動パフォーマンスに深く関与すると言われている。“集中”とは「一つの事柄に“注意”を向けて物事に取り組むこと」である。近年、カシスポリフェノールによる脳血流改善効果が、ヒト大脳動脈血管を用いたex vivo 試験で報告されている。本研究では、カシスポリフェノール摂取による認知機能(注意・集中力)への影響を検証することを目的とした。

    方法 健康成人女性7名を対象とし、カシスポリフェノール(アントシアニン50mg含有)の8日間連続摂取による認知機能(注意・集中力)への影響について、同一被験者内比較単群介入試験により検証した。聴覚オドボール課題中の脳波および心電図を客観的指標として測定した。対象の体調面を視覚的評価スケール(VAS)で、精神面を気分プロフィール検査(POMS)で主観的に評価した。得られた値の平均をpaired-t検定で比較した。

    結果 カシスポリフェノール摂取により、課題中のP300潜時が有意に短縮された一方、振幅に変化はなかった。Fzθ波の平均パワー積分比率は有意に増加し、心拍変動周波数成分のパワー比LF/HFは有意に減少した。VASの「頭の覚醒(集中度)」上昇、POMSの「緊張~不安」減少など自覚においても有意差が得られた。

    考察 カシスポリフェノールの連続摂取(8日間)により、認知機能(注意・集中力)が高まる可能性が示唆された。

  • 森 康則, 斉藤 雅樹, 早坂 信哉
    2021 年 42 巻 p. 49-56
    発行日: 2021/06/16
    公開日: 2021/06/16
    [早期公開] 公開日: 2020/12/11
    ジャーナル フリー

    背景・目的 COVID-19パンデミックに伴う、いわゆるコロナ禍の一方で、温泉地に新たに「ワーケーション」の需要が喚起されつつある。本研究では、コロナ禍以前の温泉地において、ビジネス目的の滞在実態の把握を目的に、解析を試みた。

    方法 環境省が全国の温泉地を対象に実施している大規模調査「全国『新・湯治』効果測定調査プロジェクト」のデータを用いた。同プロジェクトの調査シートの中から、温泉地旅行の目的を「ビジネス、研修など」と回答した群(N=255)と、それ以外の目的と回答した群(対照群N=7,196)について、有意差検定を行った。

    結果 対照群の年齢(58.2±16.1歳)に比べてビジネス目的の温泉地滞在者は年齢が有意に低く(49.1±14.2歳)、また、性別は対照群が男性48.1%、女性51.9%に対し、ビジネス利用群は男性75.8%、女性24.2%と、有意に男性が多かった。また、温泉地滞在期間は、対照群の日帰りが29.1%に対しビジネス利用群が12.0%とビジネス利用群が低く、対照群とビジネス利用群の一泊二日はそれぞれ54.3%と64.3%、二泊三日はそれぞれ7.8%と15.1%と、ビジネス利用群には日帰りよりも、一泊から二泊程度の宿泊を伴う滞在が好まれていることが示された。また、ビジネス利用群の宴会の実施割合(10.6%)は、対照群の3.6%と比べて有意に高かった。温泉地滞在後の感想や健康状態の変化は、全般的に対照群の方がポジティブな効果を回答する者の割合が高く、従来のビジネス目的の温泉地滞在者は、対照群に比べて健康改善効果などを比較的実感できていなかった状況が伺われた。

    考察 本研究によって明らかになったCOVID-19パンデミック以前の温泉地におけるビジネス利用者の状況は、今後、有効な温泉地におけるワーケーションの普及展開方法を議論する上で、重要な示唆になるものと考えられる。

  • 今橋 久美子, 北村 弥生, 岩谷 力, 飛松 好子
    2021 年 42 巻 p. 57-61
    発行日: 2021/06/16
    公開日: 2021/06/16
    [早期公開] 公開日: 2021/01/21
    ジャーナル フリー

    背景・目的 自治体が立案する障害福祉計画の基本方針には、施設入所者の地域生活への移行について数値目標が掲げられているが、入所者の意向や利用事由はさまざまであり、地域で暮らす場合には居住環境を整備する必要がある。本研究では、どのような環境を整備すれば地域移行が可能になるのかヒントを得るために、施設か在宅かについて状態像(障害支援区分認定調査)データで判別できるかを明らかにすることを目的とした。

    方法 自治体が所管する行政データを用いて、障害支援区分認定を受け2018年4月に障害福祉サービスを利用した361人の属性を居住場所で比較した。また居住場所を目的変数、障害支援区分認定調査80項目を説明変数として判別分析を行った。さらに在宅生活者が利用しているサービスの種類を調べた。

    結果 居住場所は医療機関39人、施設124人、グループホーム46人、在宅152人であった。施設入所者と在宅生活者の違いは、主に知的障害がある場合に顕著であり、保清や薬の管理などの見守りに加え、暴言暴行や徘徊など社会生活上問題となる行動への対応の必要度合いであることがわかった。正準相関係数は0.799(Wilks’λ=0.362, p<.01)と有意な有効性が確認され、判別的中率は90%であった。

    考察 施設から地域に移行するにあたり、生活介護や家事援助などのサービスを組み合わせるとともに、日常生活動作の見守りや促しなどの支援や、社会生活上問題となる行動に対応する体制の拡充が必要と考えられる。

  • 早坂 信哉, 三橋 浩之, 亀田 佐知子, 早坂 健杜, 石田 心
    2021 年 42 巻 p. 62-68
    発行日: 2021/06/16
    公開日: 2021/06/16
    [早期公開] 公開日: 2021/02/09
    ジャーナル フリー

    背景・目的 一般公衆浴場である銭湯を定期的に利用する者は幸福度が高いなどの心身への関連をこれまで筆者らは横断研究で報告してきた。銭湯は浴槽が複数あり温水単体による通常入浴の他、冷水浴を用いた温冷交代浴をしやすい環境にあるが、銭湯におけるこれらの入浴の効果を測定した研究は少ない。本研究では銭湯における通常入浴及び温冷交代浴の心身への影響を介入研究によって明らかにすることを目的とした。

    方法 同一被験者内前後比較試験として、成人男女10名を対象に、銭湯で通常入浴(40℃ 10分全身浴)、温冷交代浴(40℃3分全身浴→ 25℃1分四肢末端シャワー浴(2度繰り返し)→ 40℃ 4分全身浴で終了)をそれぞれ単回行い、入浴前後で16項目の心身の主観的評価項目、体温、唾液コルチゾール、オキシトシンを測定した。

    結果 前後比較では、心身の主観的評価項目では通常入浴は幸福感など11項目、温冷交代浴では13項目が入浴後に好評価となった。通常入浴では唾液コルチゾールが入浴後に有意に低下し(p=0.005)、前後の変化量は群間比較で温冷交代浴と比べて通常入浴が大きかった(p=0.049)。

    考察 通常入浴、温冷交代浴とも心身への主観的評価は入浴後に好評価となりいずれの入浴法でも心身へ良い影響を与えることが推測された。温冷交代浴の優位性が報告されることがあるが、本研究では通常入浴でも好影響が確認できた。

  • 辻田 麻紀, 松下 佐知, 高瀬 弘嗣
    2021 年 42 巻 p. 69-76
    発行日: 2021/06/16
    公開日: 2021/06/16
    ジャーナル フリー

    背景・目的 本課題は慢性心不全の治療に用いられる和温療法について実験動物を用いそのリポタンパク質代謝への影響について検討するものである。

    方法 野生型マウスを2群に分け各々をポリプロピレン製管中に保持する。WAON群は使い捨てカイロの熱赤外線下に15分間保温した後キムタオルで覆い30分間保温を続け、対照群ではキムタオルでのみ45分間保温した。以上の操作を5日間連続で行い、血清・脳脊髄液並びに肝臓を摘出し両群におけるリポタンパク質代謝に関わる因子について評価した。

    結果 マウスpool血清HDL-C、LDL-CはWAON群において対照群よりそれぞれ4.34、2.15mg/dL上昇し、中でもHDL-C中型粒子 (φ10.7nm) が最も増加していた。肝臓での遺伝子発現はAbca1が上昇(P=5.3E-07) しPcsk9Scarb1は低下 (P=0.001, P=0.0006)したがApoa1並びにHmgcrは差がなかった。血清並びに脳脊髄液のAβ40、Aβ42はWAON処置により増加傾向が見られたが有意差には至らなかった。

    考察 野生型マウスを用いた熱赤外線WAON処置により血中HDLが上昇した。肝臓ABCA1の発現上昇とSR-BIの発現低下から血中HDL新生の増加と代謝の遅延がその機序として推察され、血中HDL増加により和温療法で観察されてきた血管内皮機能の改善につながる可能性が考察される。

  • 鳩野 洋子, 弓場 英嗣, 島田 美喜, 尾島 俊之, 増田 和茂
    2021 年 42 巻 p. 77-83
    発行日: 2021/06/16
    公開日: 2021/06/16
    ジャーナル フリー

    背景・目的 保健所と並び、市町村保健センターは公衆衛生活動の第一線機関であるが、新型コロナウィルス感染症の感染拡大時において市町村保健センターが抱えた保健活動への影響は明らかにされていない。そのため、新型コロナウィルス感染症拡大時において市町村保健センターが抱えた課題について整理することを目的とした。

    方法 全国の市区町村の健康増進部門1,741ケ所宛てに、郵送自記式質問紙調査を実施した。新型コロナウィルス感染症の感染拡大に伴い生じた課題について、自由記載で回答を求めた。得られた回答について質的帰納的に分析した。

    結果 1,270ケ所から有効回答が得られた(有効回答率72.9%)。課題は【経験のない感染症の急速な拡大に伴う課題】【感染症の発生下での保健センター業務遂行に伴う課題】【終わりの見えない緊急事態の継続に伴う課題】【疾患の性質に伴い生じる倫理的な課題】の4つに整理された。

    考察 新興感染症の感染拡大は、市町村に市町村保健センターが設立されて以降、初めての事象であること、感染拡大が急速であったこと、市町村には感染症のパンデミックを想定した計画がないことなどが課題につながったと考えられた。今後は感染症の拡大時における市町村保健センターの役割も含めた対応策の検討が必要である。

助成研究
  • 渡邉 和則
    2021 年 42 巻 p. 87-93
    発行日: 2021/06/16
    公開日: 2021/06/16
    ジャーナル フリー

    背景・目的 温熱療法(ハイパーサーミア)は、がんなどの疾患部位を加温することで治療を行う方法である。ハイパーサーミアの問題点として、温熱抵抗機構による治療効果の低減が挙げられる。温熱抵抗機構の1つとして、HSF1やSAFBなどを含んだ核内ストレス顆粒の形成が報告されている。本研究では、SAFB顆粒の形成を抑制することで、温熱による細胞増殖抑制(温熱感受性)を増強する新規化合物の探索を行った。

    方法 子宮頸がん細胞であるHeLa細胞を用いて、各化合物に対する温熱増感効果が現れるのか細胞増殖アッセイで解析を行った。また、温熱増感効果を示した化合物がHSF1, SAFB顆粒の形成を抑制するのか免疫染色により検証した。

    結果 タンパクAの活性を阻害する化合物Aは温熱増感効果を示し、SAFB顆粒の形成を抑制することが明らかになった。また、化合物スクリーニングの結果、温熱増感効果を示す化合物として13化合物、そのうち大きな温熱増感効果を示した化合物として4化合物を同定した。

    考察 タンパクAを阻害する化合物Aを用いることで、温熱増感効果が現れ、SAFB顆粒の形成も抑制された。このことから、化合物AがSAFB顆粒の形成を抑制することで温熱増感効果が現れたことを示唆している。また、SAFB顆粒の形成にはタンパクAが関与していることも示唆された。

  • 山田 朋英, 庄嶋 伸浩, 山内 敏正, Chia-lin Lee, 野間 久史
    2021 年 42 巻 p. 94-104
    発行日: 2021/06/16
    公開日: 2021/06/16
    ジャーナル フリー

    背景・目的 メタボリックドミノは世界における重大死因に係る生活習慣病の共通経路であり、その進展要因とされている食生活や運動習慣が与える影響を明らかにする必要がある。本研究の目的は、人工知能による臨床エビデンスの統合と体系化を実現するため、各個人の生活情報や他のバイオマーカーなどの膨大な個人情報から、人工知能を用いて統合解析を進めることである。本研究では、1)ヘルスケアの個別化アプローチとして、入浴、特に温泉療法を促すことで、将来の死亡率や種々の致死的疾病リスクを下げることができる個人(集団)を人工知能で特定する。すなわち、この個人(集団)を特定することで、現在温泉に入る習慣のない人に対し、温泉による健康効果を具体的に提案できる。また、2)ヘルスケアの集団的アプローチとして、診療ガイドラインの礎であるシステマティックレビューの自動化を目標とし、温泉療法の過去の臨床知見の統合を目的とする。

    方法 1)のヘルスケアの個別化アプローチとして、米国健康データを用いた解析を行った。2)のヘルスケアの集団的アプローチとしては、すでに出版済みの系統的レビューについて検討を行った。

    ニューラルネットワークを介した人工知能は、文章を読んだ人が重要だと判断する暗黙の基準を学習(ディープラーニング)し、多数の文書からその基準に沿ったものを抽出できる。教師データを学習する際に、教師データに含まれる単語ごとに教師データとの関連性と単語同士のつながりに関して伝達情報量を通して数値化し、ニューラルネットワークを介し、特徴量として利用し、これを用いた。

    結果 1)のヘルスケアの個別化アプローチとして、米国健康データの温泉入浴に関連した項目に関して解析を行った。ニューラルネットワークとロジスティックスモデルの両者の検討においても、本コホートにおいては、入浴習慣の全死亡に与える影響は有意でなく、死亡リスクが低下する集団の特定には至らなかった。一方、2)のヘルスケアの集団的アプローチにおいては、ディープニューラルネットワークベースの機械学習により、系統的レビューのスクリーニング作業負荷が軽減されたことを報告した。

    考察 1.データ収集とデータ蓄積、2.データ前処理・学習・推論エンジン生成、3.開発・実行・モニタリング研究を進めていく。

  • 大篭 友博
    2021 年 42 巻 p. 105-112
    発行日: 2021/06/16
    公開日: 2021/06/16
    ジャーナル フリー

    背景・目的 前頭前野は系統発生的にヒトで最もよく発達した部位であり、認知、記憶、注意、動機付けなどの機能を担う。近赤外分光法では、脳血流変化を非侵襲的に測定することによって、課題実行時の神経活動を可視化できる。一方でバスタブ入浴習慣には、血流を改善させる効果がある。これらのことからバスタブ入浴習慣は、課題依存性の前頭前野賦活化を促進する効果が期待されるが、入浴習慣と脳血流動態の関連性は明らかにされていない。

    方法 本研究で、我々は若齢成人を対象として2週間のシャワー浴、2週間のバスタブ浴を行い、課題実行時の前頭前野脳血流の変化を測定した。用いた課題は、仮名ひろいテスト、ウィスコンシンカードソーティングテスト(WCST)、3バック課題である。

    結果 開眼安静状態に比べて、課題実施中には前頭前野の血流が上昇した。2週間にわたってシャワー浴を行うと、仮名ひろいテスト、WCST実施中の前頭前野脳血流の上昇レベルは低下した。その後、2週間にわたってバスタブ入浴を行うと、これらは一部回復した。入浴習慣の改変に伴う脳血流の変化と課題成績の変化を相関解析したところ、仮名ひろいテストの正解率と脳血流の変化に高い正の相関があった。意外なことに、3バック課題の正解率と脳血流の変化には負の相関があった。

    考察 これらの結果から、入浴習慣の変化に伴う課題依存性の脳血流変化は、課題成績と深い関連性があると考えられる。

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