2023 年 44 巻 p. 45-54
背景・目的 運動により睡眠潜時短縮や主観的睡眠感が改善し,温泉入浴により睡眠障害が改善すると報告されている.本研究は,ゲーム性や競争を伴う運動(フォト・ウォークラリー)と日帰り温泉入浴の組み合わせが睡眠に及ぼす影響を定量的に明らかにすることを目的とした.
方法 フォト・ウォークラリーを90分間実施後,温泉入浴するイベントを熊本県内3温泉地域で実施した.参加者は3地域で男女計51名(34.0 ± 2.0歳)であった.参加前および参加日の主観的睡眠感,および睡眠中の加速度データから睡眠潜時等を推定した.参加日には身体活動量を測定し,イベント参加による気分変化を二次元気分尺度を用いて調査した.
結果 イベントでの身体活動量は,3地域の平均値として8,529 ± 11歩,5.9 ± 0.1メッツ・時であった.温泉入浴後の気分は快適度が有意に増加し,参加日翌朝の主観的睡眠感じはそれぞれ起床時眠気16.8%,入眠と睡眠維持17.9%,疲労回復15.9%,睡眠時間26.1%,参加前よりそれぞれ有意に改善した(p < 0.05).
考察 日中に風情のある街並みを歩くことで気分が良くなり,フォト・ウォークラリーによって活動量が増え,これに温泉入浴による快適度の上昇が加わることで主観的睡眠感が改善することが示唆された.
結論 ゲーム性のある運動と温泉入浴を組み合わせたアクティビティは,心理面の充足を促し主観的睡眠感向上に繋がる可能性があることが示唆された.