日本健康開発雑誌
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最新号
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巻頭言
原著論文
  • 石川 鎮清, 木村 哲也, 中村 好一, 近藤 克則, 尾島 俊之, 菅原 琢磨
    2023 年 44 巻 p. 3-12
    発行日: 2023/06/14
    公開日: 2023/06/14
    [早期公開] 公開日: 2022/08/17
    ジャーナル フリー

    背景・目的 医療経済学への社会的要請は高まっているが、担う人材は十分とは言えず、養成上の課題は多い。そこで医療経済学の人材養成の課題を把握し、解決策の方向を示すことを目的とした。

    方法 2つの調査を行った。量的調査では、主要2学会の抄録集を対象に近年10年間における医療経済学分野の研究発表数、人材数を調査した。質的調査では、国内の医療経済学分野における中堅研究者8人を対象に半構造化面接を行い、質的に分析した。

    結果 日本経済学会では一般演題に占める医療経済学関連の演題の割合が2000年代には2%~6%台だったが、2012年を境に8%~10%台へと増加していた。医療経済学会では、経済学系の発表者の割合が2000年代には4~7割の幅で上下していたが、2013年以降は、上昇に転じ、2015年~2016年は7割を超えていた。インタビュー調査からは、大学教育における医療経済学の課題、研究職ポストの不足、データ利用の促進の必要性、経済学系と医学系との協働の可能性の4つのカテゴリを抽出した。

    考察 量的・質的調査の結果、社会的ニーズの増大にもかかわらず、人材育成には課題があることが明らかになった。問題解決の方向性として1)重点的で継続的な人材養成、2)雇用ポストの創出、3)医療データの利用環境の改善促進、4)医学分野と経済学分野との協働の場の創設の4つが重要と考えられた。

  • 白井 禎朗, 佐久間 理英, 中村 美詠子
    2023 年 44 巻 p. 13-20
    発行日: 2023/06/14
    公開日: 2023/06/14
    [早期公開] 公開日: 2022/08/31
    ジャーナル フリー

    背景・目的 従業員食堂に導入された機能性食品について、労働者の自由意思による摂取状況を客観的に観察して、その1週間当たりの摂取頻度分布および健康診断測定値と摂取頻度との関連を評価した。

    方法 対象者は先行研究で選出された男性労働者890人とした。食品摂取はICチップ付き食器を用いた電子精算システムにより客観的に評価をして、機能性食品が導入された2019年7月から2020年9月までの1週間あたりの摂取回数を算出した。機能性食品の導入前後の健康診断測定値の変化量を従属変数、健康診断の前12週間における1週間当たりの摂取頻度を独立変数にして、重回帰分析で関連を推定した。

    結果 健康診断の前12週間の摂取頻度分布は、大豆製品では、週0回は21.3%、週1回以上は43.8%、週2回以上は15.4%であった。大麦ごはんでは、週0回は74.2%、週1回以上は4.9%、週2回以上は2.0%だった。週0回を基準に、大豆製品では週1~2回未満(β: -7.16, p =0.030)、週2~3回未満(β: -9.50, p =0.016)、週3~4回未満(β: -12.23, p =0.046)の摂取頻度にLDL-コレステロールとの負の関連があった。大麦ごはんでは、週2~3回未満の摂取頻度に収縮期血圧との負の関連があった(β: -9.14, p =0.025)。

    考察 機能性食品導入後の従業員食堂において、男性労働者がそれらの食品を自発的に摂取した場合、大豆製品では週1回以上の摂取でLDL-コレステロールの改善、大麦ごはんでは週2回以上の摂取で収縮期血圧の改善が期待できる。

  • 小番 美鈴, 渡邊 智, 奥川 洋司, 石澤 太市, 松本 圭史, 綱川 光男, 園田 巌, 井戸 ゆかり, 早坂 信哉
    2023 年 44 巻 p. 21-31
    発行日: 2023/06/14
    公開日: 2023/06/14
    [早期公開] 公開日: 2022/11/12
    ジャーナル フリー

    目的 未就学児(子)における浴槽入浴がもたらす子の健康感や機嫌などの変化について、子の浴槽入浴習慣、保護者の背景因子との関連を示す。

    方法 2021年1月に、全国の0~5歳の子を持ち調査参加に同意を得られた429名を対象にweb調査による自記式横断研究を実施した。そのうち、データ欠損を含まない369名を分析対象とした。浴槽入浴をすることで得られる子の変化を「寝つきが良くなった、健康になった、機嫌が良くなった、会話が増えた、特に変わらない」とし、子の浴槽入浴頻度、入浴剤使用頻度、保護者の子の入浴法の意識、保護者の幼少期における入浴の思い出との関連について二項ロジスティック回帰分析を行った。

    結果 浴槽入浴を習慣的に行っている子は84.32%であり、そのうち、浴槽入浴をしっかり行うことで心身の変化が得られた子は58.68%(寝つきが良くなった19.07%、健康になった14.40%、機嫌が良くなった14.40%、会話が増えた10.81%)、特に変わらない子は25.64%であった。浴槽入浴により、子が健康になった、親子の会話が増えたと回答した者は、入浴剤使用頻度が高く、保護者の幼少期における入浴で楽しんだ思い出と関連があり、子の機嫌が良くなったと回答した者は、入浴剤使用頻度が高く、皮膚への乾燥防止などの子の入浴法の意識と関連があった。

    考察 浴槽入浴から得られる子の健康感や機嫌、親子の会話などの変化は、入浴剤の使用や子の入浴法の意識、保護者の幼少期の入浴の思い出と関連している可能性がある。

  • 後藤 康彰, 西尾 真由美, 田中 秀宗, 芳賀 康平, 有泉 健
    2023 年 44 巻 p. 33-43
    発行日: 2023/06/14
    公開日: 2023/06/14
    [早期公開] 公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

    背景・目的 温泉地で仕事仲間と余暇を楽しみながら働く過ごし方(温泉ワ―ケーション)が、心身にもたらす効果を検討することを目的とした。

    方法 2020年12月~2022年3月に、インフォームドコンセントを得られた、リモートワーク導入企業等で働く健常成人133名(男性95名、女性38名、平均年齢38.7歳、SD10.8)を対象とした。被験者は企業単位を原則とし、2泊3日温泉地で自由に過ごす群(以下未介入群:104名)、3泊4日温泉地で健康関連アクティビティ(入浴・運動・食事・休養等)提供を受け過ごす群(以下介入群:29名)に分かれ、全国の温泉地(延べ25か所)で温泉ワ―ケーションを実施した。滞在前後に末梢血液循環、自律神経機能、唾液アミラーゼ活性、歩行能力・柔軟性、健康関連自己評価(12項目)、気分・精神の状態(POMS2短縮版)、消化器疾患症状尺度(GSRS)を測定した。

    結果 介入群・未介入群ともに、唾液アミラーゼ活性、歩行能力・柔軟性、気分・精神の状態(8下位尺度)、健康関連自己評価、消化器症状の有意な改善が認められた。介入群では、末梢血液循環の有意な改善、自律神経(交感神経・副交感神経機能)の有意な賦活も認められた。

    考察 温泉ワ―ケーションが心身に多様なベネフィットをもたらし、滞在中の健康関連アクティビティがベネフィットを増幅する可能性が示唆された。今後も温泉地を活用した働き方・健康づくりのあり方を検討し、勤労者・企業・温泉地への貢献に取り組みたい。

  • 入部 祐郁, 永利 梨乃, 松本 直幸
    2023 年 44 巻 p. 45-54
    発行日: 2023/06/14
    公開日: 2023/06/14
    [早期公開] 公開日: 2023/05/09
    ジャーナル フリー

    背景・目的 運動により睡眠潜時短縮や主観的睡眠感が改善し,温泉入浴により睡眠障害が改善すると報告されている.本研究は,ゲーム性や競争を伴う運動(フォト・ウォークラリー)と日帰り温泉入浴の組み合わせが睡眠に及ぼす影響を定量的に明らかにすることを目的とした.

    方法 フォト・ウォークラリーを90分間実施後,温泉入浴するイベントを熊本県内3温泉地域で実施した.参加者は3地域で男女計51名(34.0 ± 2.0歳)であった.参加前および参加日の主観的睡眠感,および睡眠中の加速度データから睡眠潜時等を推定した.参加日には身体活動量を測定し,イベント参加による気分変化を二次元気分尺度を用いて調査した.

    結果 イベントでの身体活動量は,3地域の平均値として8,529 ± 11歩,5.9 ± 0.1メッツ・時であった.温泉入浴後の気分は快適度が有意に増加し,参加日翌朝の主観的睡眠感じはそれぞれ起床時眠気16.8%,入眠と睡眠維持17.9%,疲労回復15.9%,睡眠時間26.1%,参加前よりそれぞれ有意に改善した(p < 0.05).

    考察 日中に風情のある街並みを歩くことで気分が良くなり,フォト・ウォークラリーによって活動量が増え,これに温泉入浴による快適度の上昇が加わることで主観的睡眠感が改善することが示唆された.

    結論 ゲーム性のある運動と温泉入浴を組み合わせたアクティビティは,心理面の充足を促し主観的睡眠感向上に繋がる可能性があることが示唆された.

  • 早坂 信哉, 古川 真也, 松枝 和輝
    2023 年 44 巻 p. 55-60
    発行日: 2023/06/14
    公開日: 2023/06/14
    [早期公開] 公開日: 2023/04/24
    ジャーナル フリー

    背景・目的 入浴方法は気泡浴など様々な工夫がなされており、1㎛未満の微細な気泡(Ultra fine Bubble : UFB)を混入させた湯も最近入浴に応用されている。本研究は水道水の沸かし湯とUFB給湯器(RUF-UE2406AW、リンナイ、日本)に付属しているUFB発生装置を用いて生成させたUFBを混入させた湯によるシャワー入浴での皮膚角層水分量、シャワー後保湿の差を明らかにすることを目的とした。

    方法 健康な成人女性16名を対象に水道水シャワーとUFBシャワーとしてそれぞれ40℃20秒部分浴(前腕浴シャワー)の同一被験者内ランダム化比較試験を実施した。シャワー前からシャワー30分後まで経時的に角層水分量の測定を行った。シャワー前とシャワー後の各測定時点での前後比較は反復測定のある一元配置分散分析と多重比較を行い、各同測定時点の群間比較を対応のあるt検定によって行った。

    結果 前後比較では水道水シャワーの角層水分量はシャワー後に有意に増加したが、30分後にもとに戻り有意差は得られなかった。一方、UFBシャワーはすべての測定時点で有意に増加した。群間比較では水道水シャワーと比較し、シャワー後の15分、30分の測定点でUFBシャワーの角層水分量が有意に多かった。

    考察 UFBシャワーは角層水分量を増加させ、シャワー後も保湿効果が高く、シャワー入浴後の肌乾燥が気になる者にとって効果的な選択肢となりうると考えられた。

助成研究
  • 井上 敬一
    2023 年 44 巻 p. 63-68
    発行日: 2023/06/14
    公開日: 2023/06/14
    ジャーナル フリー

    背景・目的 マイトファジーは古くなったミトコンドリアを新陳代謝することで、心身を健康に保つと考えられている。古来健康に良いとされる温泉入浴もマイトファジーを誘導するのではないかと考え、本研究では温熱刺激によるマイトファジー誘導の可能性を検証した。

    方法 マイトファジー活性モニターマウスに、3週間にわたり毎日温熱刺激を与えた(1日30分40℃)。3週間後安楽死させ、心臓、骨格筋、白色脂肪、褐色脂肪を摘出し、マイトファジー活性、マイトファジー誘導遺伝子発現、ミトコンドリア量を定量した。

    結果 温熱刺激を与えたマウスの各臓器において、マイトファジー活性レベル、マイトファジー誘導遺伝子発現量、ミトコンドリアDNA量、ミトコンドリアタンパク質量に有意な差は見られなかった。

    考察 習慣的な温熱刺激はマイトファジーを誘導しないことが明らかとなった。

  • 宮田 昌明, 益満 智美, 和田 麗, 竹ノ内 千紗, 津曲 真二, 窪薗 琢郎, 大石 充
    2023 年 44 巻 p. 69-74
    発行日: 2023/06/14
    公開日: 2023/06/14
    ジャーナル フリー

    背景・目的 研究の目的は、入浴習慣と客観的に評価した睡眠との関連、および動脈硬化との関連を検討することである。

    方法 研究1は、2021年度に開催された垂水市在住者の健康チェック(垂水研究2021年)に参加した65歳以上の高齢者202人、研究2は、垂水研究2021年の全参加者のうち、血管硬化度の指標であるCAVI (Cardio-Ankle Vascular Index)を解析できた524人を対象者とした。入浴習慣は質問票により調査し、客観的睡眠評価は、アクチグラムを1週間装着して評価した。

    結果 研究1:65歳以上の高齢者において、入浴習慣(自宅や温泉の入浴頻度、温泉の利用頻度、温泉でのコミュニケーション)とアクチグラフを用いて客観的に評価した睡眠時間や睡眠効率との関連を検討したが、有意な関連は認めなかった。研究2:自宅や温泉で毎日入浴する群(472人)のCAVI値は8.6±1.1であり、毎日入浴しない群(52人)のCAVI値9.3±1.4と比較して有意に低値を示した(p=0.002)。週1回以上温泉に行く群(124人)と週1回以上温泉に行かない群(400人)のCAVI値に有意差は認めなかった。

    結論 65歳以上の高齢者において、入浴習慣と客観的に評価した睡眠時間や睡眠効率との有意な関連は認めなかった。若年者も含めた地域在住コホートにおいて、自宅や温泉に毎日入浴する群は血管硬化度が低いことが示唆された。

  • 原口 省吾
    2023 年 44 巻 p. 75-80
    発行日: 2023/06/14
    公開日: 2023/06/14
    ジャーナル フリー

    背景・目的 皮膚の一番外側に位置する表皮は、外界からの異物・細菌等の侵入から身体を守り、体内の物質が流出しないように包み込む薄い強固な膜である。表皮を形成する細胞は常に入れ替わりながら健康な表皮機能を保っているが、加齢や皮膚疾患では表皮細胞の入れ替わり(ターンオーバー)が低下し、表皮に隙間が生じやすくなる。

    本研究ではヒト表皮のターンオーバーに着目し、カルシウム-塩化物泉(カルシウムイオン)への入泉がヒト表皮細胞へ及ぼす影響をトランスクリプトーム解析により網羅的に解析した。

    方法 9名の高齢女性の皮膚組織から酵素処理により表皮を単離した。得られた皮膚は、1名分ごとに2つに分け、片方をコントロール群、もう一方をカルシウムイオン処理群とし、37℃で1時間培養した。コントロール群とカルシウムイオン処理群からそれぞれtotal RNAを抽出した後、トランスクリプトーム解析とそれに続くバイオインフォマティクス解析により遺伝子発現の差異を網羅的に比較解析した。

    結果 RNAの品質チェックをクリアした6名分を用いて解析を行った。カルシウムイオン処理群では757の遺伝子で発現量増加、68の遺伝子に発現量低下が見られた。これらの変化がどの様な表皮機能に関わるのか明らかにするために、Gene Ontology解析を行った結果、表皮細胞の分化・移動を促す遺伝子群の変化であることが明らかになった。

    考察 ヒト表皮を単離して解析に用いているため、厳密には入泉時のヒト皮膚の変化を完全に反映しているとは言い切れないが、カルシウムイオンを高濃度に含む温泉への入泉であれば表皮のターンオーバーに関わる遺伝子発現に変化を引き起こす可能性は高いと考えられる。塩化物泉では適応症に皮膚乾燥症があげられているが、塩化物泉とひとまとめにすることなく、今後、カルシウムイオン高濃度含有泉と低濃度含有泉で皮膚乾燥症の症状変化を解析するような研究が実施されると臨床的裏付けがもたらされることが期待できる。

  • 河村 和弘
    2023 年 44 巻 p. 81-86
    発行日: 2023/06/14
    公開日: 2023/06/14
    ジャーナル フリー

    背景・目的 日本には子宝に恵まれるという、いわゆる「子宝の湯」と称される温泉がある。しかし、「子宝の湯」の不妊症に対する効用の科学的な研究報告はない。本研究では「子宝の湯」の効用について、特異的な温熱作用による血行促進効果に基づく卵巣機能改善の可能性を、代表的な「子宝の湯」を用いて動物試験にて検証した。

    方法 「子宝の湯」の候補としてCa/Na硫酸塩・炭酸水素塩・塩化物温泉(Gの湯)、子宝の効用のない中性低張性冷鉱泉(Pの湯)を使用した。メスマウスに抗癌剤(ブスルファンとシクロフォスファミドの混合液)を皮下投与し、その4週間後に卵胞発育を誘導した。翌日に保定器にマウスを入れ、40℃に保温した恒温槽に固定した。入浴は15分間、その後1時間の休息を取り、これを2回繰り返した。翌日に排卵を誘起し、排卵された卵子数を測定した。

    結果 抗癌剤投与により、卵巣は顕著に縮小し、卵胞数の減少と卵巣間質に多くの空洞が観察され、卵巣機能不全を呈していることを確認した。本モデルマウスにおいて、Gの湯に入浴したマウスはPの湯および、非入浴区と比較して有意に排卵数が多かった(p<0.05)。これらの卵子を用いた体外受精では、胚盤胞到達率は3群間に有意差を認めなかった。

    考察 卵巣機能不全マウスの温泉入浴において、「子宝の湯」は排卵数を増加させたことから、卵胞発育を回復する特別な効果を有する可能性が示唆された。

  • 伊藤 まゆみ, 今井 裕久, 佐々木 和之, 鴨下 記久枝
    2023 年 44 巻 p. 87-95
    発行日: 2023/06/14
    公開日: 2023/06/14
    ジャーナル フリー

    背景・目的 足湯は、健康増進・観光資源の観点から可能性が注目されてきた。一方で、衛生面の問題⁴⁾などの指摘は、足湯の文化的価値や公益性の追求に影を落としてきた。本調査では足湯の公益性を数値で提示し、その価値を位置付けることを目的とする。

    方法 伊豆長岡に設置されている既存足湯および移動式足湯「モバイル足湯」を用いた社会実験を対象に、足湯の利用者へのヒアリング調査とアクティビティ調査を実施し、各足湯における利用者実態を分析する。

    結果 本調査では各足湯の利用者特性を明らかにした。伊豆の国市の足湯が、日常的に温泉を楽しむ機会を市内のみならず県内の広範囲に創出していることがわかった。

    考察 別グループの間で利用者同士に会話などの交流が高頻度でみられ、足湯が他者との交流を促している可能性が示唆された。

  • 芳賀 康平, 後藤 康彰
    2023 年 44 巻 p. 97-103
    発行日: 2023/06/14
    公開日: 2023/06/14
    ジャーナル フリー

    背景・目的 本研究の目的は高濃度炭酸泉への連浴をともなうプログラム提供の睡眠の質に与える影響を観察し、企業に温泉ワーケーションのベネフィットを訴求することを通じて、温泉地の活性化に貢献することである。

    方法 インフォームドコンセントを得られた、首都圏の在宅テレワーカー4名(男性2名、女性2名、平均年齢42.5歳、SD7.6歳)を対象とした。2022年10月に、被験者は高濃度の炭酸泉を有する長湯温泉で4泊5日のワーケーションを実施した。滞在中は温泉利用指導者の個別カウンセリング、温泉利用型健康増進施設における湯中体操、高濃度炭酸泉への毎日の入浴を体験した。滞在1週間前ならびに滞在中に睡眠時脳波、OSA睡眠調査票を計測し、滞在前後には、健康関連自己評価、末梢血液循環、唾液アミラーゼ活性を測定した。

    結果 長湯温泉滞在中に全被験者で、睡眠時脳波の第1睡眠周期における総δパワー値、第1睡眠周期時間(レム睡眠を除く)、ノンレム睡眠時の総δパワー値、全ノンレム睡眠における第1睡眠周期の比率が滞在前週を上回った。また、滞在前後で全被験者で健康関連自己評価、OSA睡眠調査票の疲労回復因子、末梢血液循環健康度の改善が認められ、アミラーゼ活性が高値の者は低減が認められた。

    考察 長湯温泉の高濃度炭酸泉における温泉入浴介入をともなうテレワークをともなう滞在が、深く質の良い睡眠を促し、末梢血液循環の改善、ストレスの低減に寄与する可能性が示唆された。今後も働きながらもQuality of Work Lifeを高められる温泉地の可能性を追求し、働き世代の温泉地の利活用を促進していく。

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