魚類学雑誌
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ハゼ科魚類の一生における器官組織の変化-ILシロウオの下垂体標的器官
田村 栄光本間 義治
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1970 年 17 巻 1 号 p. 29-36

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抄録
小型の年魚であり, 春季に産卵のため遡河するシロウオの生活形をよりよく理解する目的で, 前報 (視床下部―下垂体系) に引続き本種の一生にわたる材料を採集して, 下垂体の標的器官のうち, 甲状腺, 間腎組織 (副腎皮質), 両生殖腺を選び組織学的変化を追跡観察した.甲状腺は, 腹大動脈に沿ってその前部に散在している戸胞群よりなり, 海で生育しているものでは機能が低下している.ついで, 遡河初期の先発群の甲状腺は比較的活動が高いが, 後続群では遡河末期に至る群ほど低くなるので, 浸透圧調節に関与しているとは思われない.一方, 産卵場の個体では最高の亢進状態に達していたが, 雌の方で雄に比しより激しい退行蕩費像を示した.間腎組織の増大には, 生殖腺の成熟に伴う目立った変化が認められないが, 産卵場の個体では退行像を示した.シロウオ卵巣卵の発育は同時的であり, 遡河後産卵場に至るまでの問に急速に成熟する.放卵後の卵巣には多数の排卵痕がみられるが, 黄体が完成しないうちに発死してしまう.精巣は管状で, 貯精嚢などの付属腺をもたず, 精虫の発達は同時的ではないが, 産卵場において完熟する.しかし, 雄魚の死後にも精巣腔中に相当數の残存精虫が認められた.
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