クロタチカマス類の1稀種ナガタチカマス1個体が1971年5月に, 京都府伊根の定置網で漁獲された.本種は従来日本ではMimasea taeniosoma Kamoharaとして知られていたが, 研究の結果M.taeniosomaは南アフリカから記載されたThyrsitoides marleyi Fowlerの異名であるとの結論に達した.ナガタチカマスはこれまでに日本近海の太平洋側で約10個体記録されているが, 日本海側からは今回の1個体が初記録である.このこととこの個体が充分な遊泳力を有すると思われる大きさであることを考慮に入れると, この個体は目本海の外かち日本海に回遊して来て岸に寄り伊根の定置網に漁獲された可能性が大きい。従って本種の再生産は日本海では行われていないと考えられ, 本種は口本海の在来種ではなく遇来種と考えるのが妥当であろう。