魚類学雑誌
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26 巻, 4 号
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  • 佐藤 光昭, 安田 富士郎
    1980 年 26 巻 4 号 p. 315-324
    発行日: 1980/02/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    琉球列島石垣島から得たカライワシ属Elopsの葉形幼生を数個体飼育し, その変態過程を明らかにした。その結果幼生の発生は背・臀鰭の位置, 鰾の形, 体形・体長, 色素胞の配列, 幼歯の形状, 内部骨格の骨化, 成長率などから葉形幼生期, 第1変態期, 第2変態期, 稚魚期の4期に分けることができた.
    本幼生は66~68筋節, 67個の脊椎骨を有し, Ehawaiensisと同定された。なお日本産カライワシは従来E.machnataとされてきたが, E.hawaiensisの誤りと思われる.
  • 中坊 徹次, 山本 栄一
    1980 年 26 巻 4 号 p. 325-328
    発行日: 1980/02/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    九州―パラオ海嶺の深さ330~360mの海山から, イナカヌメリ科Draconettidaeの1未記載種を得たので, Centrodraco otohime, オトヒメヌメリ (新称) として, ここに記載した.本種は体側上部に短くて細長い黄斑 (固定標本では白ぬきの褐色斑) が散在すること, 第一背鰭棘が短くて硬いことにより他種と区別される。特に後者の特徴から, 本種をRegan (1913) のCentrodraco属に入れた.
  • Gerald R. Allen, Jack T. Moyer
    1980 年 26 巻 4 号 p. 329-333
    発行日: 1980/02/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    南西オーストラリアから得られたハタ科の新種Ellerkeldia wilsoniを記載した.本種は, 特異な斑紋, 17~18背鰭軟条, 8臀鰭軟条, 44~48側線鱗をもつことで, 同属他種と区別される.オ― ストラリア, ニュージーランド海域の, Ellerkeldia属6種の検索表を作成した.
  • 鈴木 克美, 田中 洋一, 日置 勝三
    1980 年 26 巻 4 号 p. 334-341
    発行日: 1980/02/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    水族館で6~20カ月間飼育されたシラコダイで観察された産卵生態と初期生活史について報告する.産卵は3月, 8月, 9月及び10.月に観察され, 産卵時刻は18時08分~21時51分, 産卵時水温は23QCまたはそれ以上であった.本種の産卵は通常雌1尾と複数の雄とによってなされ, 既知のキンチャクダイ類の産卵がハーレム内の雌雄1対でなされるのとは明らかに相違する.
    受精卵は卵径0.70~0.74mm, 油球1個を有する無色透明の球形分離浮性卵で, 卵膜及び卵黄表面に特殊な構造は見出せず, 卵膜腔は狭い.水温22.2~23.7QCで受精後28時間10分に孵化が始まる.孵化直後の仔魚は全長1.45~1.53mm, 長卵形の卵黄 (長径0.95~0.98mm) の先端は頭部より前方へ突出する.卵黄後端に1個の油球 (径0.18mm) を有し, 油球の後端は卵黄表面より突出する。孵化直後の仔魚の体形は既知のキンチャクダイ類3種のそれに比べて短く全体に丸味を帯び, 近縁のゲンロクダイ (印刷中) のそれに似る.孵化12時間後に黄色素胞が出現し, 孵化72時間後まで仔魚の成長に伴って顕著に発達する。これはキンチャクダイでは孵化22時間後に一時的に黄色素胞が発現し, タテジマヤッコでは孵化72時間後まで黄色素胞が見出されなかったのとの顕著な相違点である.
  • 名越 誠, 酒井 寿之
    1980 年 26 巻 4 号 p. 342-350
    発行日: 1980/02/15
    公開日: 2011/02/23
    ジャーナル フリー
    アマゴ
    Oncorhynchus rhodurus
    Jordan et McGregorの食性については, 川合(1955), 白石(1958), 名越ほか(1972), 古川(1978)らの報告がある.これらのうちで白石(1958)は食性の季節変化, 成長に伴なう変化などを詳しく報告している.古川(1978)は渓流域の大型のアコゴが水面に落下する陸生昆虫をおもに摂取する点で, 小型個体より空間的に有利な水表面近くを占めることを指摘している.すなわち, 彼は渓流に生息するアマゴにsize hierarchyの現象が存在することを示唆している。Size hierarchyが成長に及ぼす影響については, Brown(1946, 1957), Magnuson(1962), 名越(1967a, b), Nagoshi(1978)らが種々の魚類を用いて実験的に認めている.
    本研究では, アマゴの成長期である5月から11月に大きさの異なる個体の胃内容物を調査し, 大型のアマゴは常に水面に落下する陸生昆虫を主に摂取し, 空間的に小型個体より優位な場所を占めることを認めた.ここでは, これらの点からアマゴの成長に関与するsize hierarchyの現象について検討した.
  • 駒田 格知
    1980 年 26 巻 4 号 p. 351-356
    発行日: 1980/02/15
    公開日: 2011/07/04
    ジャーナル フリー
    最近, 天然, 養殖の区別なく, 脊椎骨に異常のみられるいわゆる変形魚が多数見出され, その発現率, 変形の類型等についての報告がなされている (Dahlberg, 1970; Dawson, 1964, 1966, 1971; Dawson and Heal, 1976; MooreandHixon, 1977;松里, 1978;Komada, inpress).ウグイTribolodon hakonesis Guntherに関しても例外ではない (池田, 1936;今田・吉住, 1973;駒田, 1978).しかし, これら変形魚につき出現場所別, 時期別の発現状況および症状などを魚種間または同一魚種内で比較検討する際の基準とすべきデータはほとんどない.
    本研究は河床付着性餌料を食し, 半底性の生活を行うといわれる (水野ら, 1958;中村, 1969) ウグイに関して, その脊椎の形態異常発現の時期を明らかにするに先だち, 正常個体の脊椎骨の成長を明らかにする目的で, 成長段階別および雌雄別に椎体の長さと直径を測定し, 成長のようすを検討したものである.
  • 中村 泉
    1980 年 26 巻 4 号 p. 357-360
    発行日: 1980/02/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    クロタチカマス類の1稀種ナガタチカマス1個体が1971年5月に, 京都府伊根の定置網で漁獲された.本種は従来日本ではMimasea taeniosoma Kamoharaとして知られていたが, 研究の結果M.taeniosomaは南アフリカから記載されたThyrsitoides marleyi Fowlerの異名であるとの結論に達した.ナガタチカマスはこれまでに日本近海の太平洋側で約10個体記録されているが, 日本海側からは今回の1個体が初記録である.このこととこの個体が充分な遊泳力を有すると思われる大きさであることを考慮に入れると, この個体は目本海の外かち日本海に回遊して来て岸に寄り伊根の定置網に漁獲された可能性が大きい。従って本種の再生産は日本海では行われていないと考えられ, 本種は口本海の在来種ではなく遇来種と考えるのが妥当であろう。
  • Robert F. Myers
    1980 年 26 巻 4 号 p. 361-363
    発行日: 1980/02/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    グァム島からCentropyge coliniが採集された。この種類は今まで5900kmもへだたったCocos-Keeling諸島からしか知られていなかったものである。
  • 金山 勉
    1980 年 26 巻 4 号 p. 364-366
    発行日: 1980/02/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    ヤセテングトクビレSarritor frenatusはAndriyashev (1937) により背鰭間の骨板数および胸鰭上葉の白色点の有無に基づき2亜種, ヤセテングトクビレS.f.frenatusおよびシロブチテングS.f.occidentalisに分けられた。しかし, 北太平洋北部から得られた204個体の本種を比較検討した結果, これらの特徴は本種の種内変異であることが明らかになった。すなわち, 背鰭間の骨板数の違いは胸鰭の斑紋の型と関係なぐ地理的変異によるもので, 骨板数は北太平洋東部から西部へ向かって, 2から4へと次第に増加する、なお, 側線鱗数の変異も地理的変異によるもので, 北太平洋東部から西部へと, 46から28まで, 次第にその数が減少する。
  • 澤田 幸雄, 坂本 一男
    1980 年 26 巻 4 号 p. 367-368
    発行日: 1980/02/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    バケヌメリは第一背鰭を欠くことで特徴づけられるネズッポ科魚類で, 世界でもあまり採集記録のないめずらしい小型の種類である。
    今回, 北海道南茅部町臼尻で採集された雌個体を使って, 染色体の観察を試みた。その結果, 2n=36で, 核型は18対の端部着糸染色体のみにより構成されていることが判明した.本種におけるように, 2nが少なく, 核型がすべて端部着糸染色体によって構成される魚類は, 真骨類の中では比較的めずらしい。本科魚類の染色体について, Nogusa (1960) はネズミゴチでは2n=38であると報告している。このことと今回の結果とを考え合わせると, ネズッポ科魚類は2nが少ないことで特徴づけられるらしい。
  • 水野 正一, 富永 義昭
    1980 年 26 巻 4 号 p. 369-372
    発行日: 1980/02/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    奄美諸島の加計呂麻 (かけうま) 島, 実久 (さねく) の水深約3mにおいて, Camanthus unipinnaワタゲダンゴオコゼ (新称) が採集された.これは, 日本からの初記録であり, 北限の記録でもある.Marshall諸島産の標本との比較も行い, ここに報告する.Marshallからは既にSchultz (1966) により記録されている.
    ダンゴオコゼ属の魚は, 体表が指状突起に密に覆われ, 口裂や鰓孔が小さいため, 標本を損傷することなしに, 諸形質を正確に把握するのは難しい.従来の記載に若干の訂正補足を要する部分が認められた.
  • 道津 喜衛, 岸田 周三
    1980 年 26 巻 4 号 p. 373-374
    発行日: 1980/02/15
    公開日: 2011/07/04
    ジャーナル フリー
    長崎大学水産学部練習船鶴洋丸は, 1976年の南西太平洋における遠洋航海の途次, 寄港予定地への入港時間調整のために, 10月17日, サンゴ海北部海域 (9゜23’S, 157゜30’E) で午後4時から6時までの間漂泊した.この間に, 1尾のヨゴレCarcharhinus longimanus (雌, 全長1, 530mm) が海面近くまで浮上してきて, 鶴洋丸の近くで泳ぎ廻った.そこで, 乗組員が生サバを餌につけて手づりでこのサメを釣り上げた、釣り上げられたヨゴレから, その体への吸着部位は明らかにできなかったが, 大, 小2尾のコバンザメ科の魚が得られた、当時, 鶴洋丸に乗船していた筆者らのひとり道津が採集直後にそれらの魚体について調べたところ, そのうちの大型個体 (雌, 全長219mm, 標準体長170mm) の吸板はその後部を横切る1個の表皮性の隔壁によって細歯薄板の列が前後2つの部分に分かれており, 吸板は複葉形をしていた (Fig.1A).それまでの知見では, コバンザメ科の魚の特徴的な器官であり, また, 第1背びれの相同器官であるとされ, 重要な分類形質の一つとなっている吸板は, いずれの種類においても隔壁のない単葉形のものであるとされていたので (松原, 1955), 上記の個体は, あるいは未記載の属, 種の魚ではないかと考えられた.しかし, その後, 筆者らが当個体のフォルマリン固定, 保存標本について検討した結果, その体各部の諸形質からみて, それは, 新しい種類ではなく, 異状に発達した吸板を持つナガコバンRemom rmora (Linnaeus) であることがわかった.なお, 同時に採集した他の1尾 (標準体長106mm;Fig.1B) も同じ種類であった.
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