法と心理
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Print ISSN : 1346-8669
知的障害のある自閉スペクトラム症児における自己動作の報告の促進
質問応答が報告の正確性に及ぼす影響
河南 佐和呼野呂 文行
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ジャーナル オープンアクセス

2017 年 17 巻 1 号 p. 32-46

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抄録

出来事の証言や供述を求められることは、どのような子どもにおいても可能性はある。しかし、 障害のある子どもの証言研究は進んでいない。そこで本研究は、3 名の知的障害のある自閉スペク トラム症児に対して、自己動作の報告を求め、正確な報告の促進に質問者と質問応答を繰り返すこ とが影響を及ぼすか検討することを目的とした。本研究は一事例実験デザインで行われた。1 時間 の教育相談中に従事した 8 種類の活動 ( 各 4 種類の勉強および遊び ) に関して終了後に質問者が「何の 勉強 ( 遊び ) をしたの?」と尋ね、それに対して行われた報告の正確性、話題 ( 活動名 ) 数、文節数を それぞれ従属変数とした。介入として、各活動従事直後に聞き手が同様の質問を行い、参加児に活 動名を繰り返し言語化させた。介入の結果、従事した活動について正確に報告できるようになり、 報告可能な話題数も増加した。また介入手続きを撤去しても、3 名中 2 名の参加児において、正確 な報告が維持する様子が観察された。本研究より、知的障害のある自閉スペクトラム症児における 正確な報告成立の可能性と供述を求める際の課題が示唆された。

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© 2017 法と心理学会
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