2020 年 20 巻 1 号 p. 18-23
10年前の本学会周年記念シンポジウムで、浜田寿美男は渦中性という視点から法心理学の研究状況に問いかけた。今回の20周年記念シンポジウムでは、浜田が提示した「宿題」はこの10年でどこまで解答されたかを顧みた。供述分析、記憶実験、スキーマアプローチの三領域について直近10年を振り返ってみた。供述分析では、供述聴取場面でのディスコミュニケーションへの注目を、この10年の成果の一つとしてあげることができた。記憶実験は着実に研究を積み重ねてきたが、個別具体的な人間、環境内で動き回る生態学的人間への着目は十分とは言い難く、浜田の問いかけをいまだ満足させるものではないことが指摘された。スキーマアプローチは、浜田の供述分析と別の形で、渦中性の問いに答えようとした。記憶についての理論化が進み、実務での評価も得られつつある。なお多くの宿題が残されている。浜田の問いかけの主旨を違えることなく、法心理学研究が継続されることが期待される。