第19回法と心理学会において、供述の信用性評価に関する裁判官と心理学者とのあいだのディスコミュニケーションの原因について報告したが、本稿では、その原因を踏まえた上でのディスコミュニケーションの克服について報告する。まず、裁判官と心理学者は、供述というものへの接し方について、お互いに異文化的世界に身を置いていることを理解し合わなければならない。前者は供述内容の信用性を直截に判断しようとするのに対し、後者は供述をデータとして扱いそこに見られる諸特性を判断しようとするものである。この違いを前提に、裁判官の持つ自由心証主義と抵触しない範囲で、供述の信用性評価に関する心理学的鑑定をする際の鑑定事項を提唱する。