法と心理
Online ISSN : 2424-1148
Print ISSN : 1346-8669
量刑判断における心理的距離の影響を抑制する要因の検討
谷口 友梨池上 知子
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ジャーナル オープンアクセス

2021 年 21 巻 1 号 p. 109-122

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抄録

谷口・池上(2018a)の研究では、犯罪事件の発生時期によって事件に対して知覚される心理的距離が規定され、解釈の仕方が変化し、それによって被告人に科すべき量刑が影響を受けることが示された。そこで、本研究では、正確に判断することを動機づけることで、事件の発生時期が量刑判断に及ぼす影響を抑制できるかを検討した。参加者に架空の強盗殺人事件の概要を呈示し、数十年前または数か月前に発生した事件であると伝えて、事件に対する潜在および顕在レベルの推論を測定した。このとき、概要呈示前または概要呈示後に正確に判断することを動機づける教示を行った。その結果、概要呈示前に正確さを動機づけた場合、事件の発生時期は量刑判断プロセスに影響を及ぼさなかった。これに対し、概要呈示後に正確さを動機づけた場合、事件の発生時期が最近であるほど、事件の周辺的特徴に焦点を当てやすく、周辺情報を考慮した量刑判断が生じやすいことが示された。正確さを動機づけられるタイミングによって、量刑判断プロセスにもたらす影響が異なることについて司法判断の公正性の観点から議論された。

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© 2021 法と心理学会
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