抄録
CTが日常臨床に取り入れられるようになり,ボーン・ハウジングと歯根との関係など今までの2次元のレントゲン像ではわからなかったことが診断出来るようになってきた.しかし現在はフルデジタルへの変革の過渡期であり,従来からある2次元セファロの分析法も活用しつつ,デジタルとアナログの両方の長所を活かしたハイブリッドな診断と治療方法が有効である.
そこで,CTから構築したセファログラムとTOPアナライザーシステムを用いて診断を行い,アナログのセットアップモデルを製作してブラケットプレースメントを行った1症例を提示する.患者は初診時20歳女性で,上顎右側中切歯の前突を主訴として来院したAngleⅠ級上下顎前突症例である.上下顎第一小臼歯の抜去を行い,ハーフリンガルで治療を行った.上顎口蓋側に2本の歯科矯正用アンカースクリューを埋入して前歯部のリトラクションを行った.動的治療期間は2年0か月で側貌の改善がみられ患者の満足を得たが、いくつかの反省点も残った.