音声言語医学
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原著
Multi-Dimensional Voice Program(MDVP)およびPraatを用いた音響分析結果の比較
井手 美稀川越 仁湯本 英二兒玉 成博
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2019 年 60 巻 3 号 p. 214-219

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抄録

MDVPは高価にもかかわらず音響分析に広く使用されている.一方,Praatはフリーソフトウェアである.無関位持続発声母音/アー/を用いて,正常声60音声(男性30名,女性30名)と嗄声73音声(男性21名41音声,女性17名32音声)を分析した.正常音声と病的音声を録音しデジタル化された音声ファイルであり,定常的な中央1秒区間を分析に使用した.同じ音声ファイルを用いて2つの異なるソフトウェア(MDVPとPraat)で音響パラメータ(F0,jitter,shimmer,HNR)を測定し両ソフトウェアで得られた結果を比較した.著者らはMDVPとPraatの両ソフトウェアを使用し各パラメータの測定値を比較し正常値を設定した.両ソフトウェアの測定結果は高い相関が見られた.F0は両ソフトウェアの測定結果がよく一致したがjitterはMDVPよりPraatの測定値が有意に小さく,HNRはPraatの測定値がMDVPの約2倍と有意に大きかった.shimmerは有意差がなかった.そのため,施設およびおのおののソフトウェアごとに正常値を設定する必要があり,学会発表や論文記載時には録音時の機器を含めた状況および測定に用いたソフトウェア(バージョン)を明記しておくことが望ましいと考えられた.

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© 2019 日本音声言語医学会
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