音声言語医学
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発話非流暢に及ぼす歌唱経験の影響―発吃間もない吃音児への歌指導を通して―
村瀬 忍吉岡 博英
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1994 年 35 巻 3 号 p. 255-260

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抄録

発吃後6ヵ月以内の吃音幼児を対象に, 歌唱経験を積み重ねることを目的とした指導を一定期間行い, 自由会話での発話の非流暢性の変化を検討した.被験児は吃音男児3名であった.被験児には, 歌唱経験を増加させるための個別指導を行い, さらに, 毎日母親とともに歌唱することを家庭での課題として課した.指導の結果は, (1) 家庭課題の遂行の頻度, (2) 指導中に歌うことのできた歌詞の割合, (3) 歌唱時の発話の非流暢性, (4) 自由会話における発話の非流暢性の4点において検討した.検討の結果, 指導の期間中, どの被験児も歌唱経験を通常より豊富に持つことができたと考えられた.しかも, 歌唱時の被験児の発話は自由会話より流暢であり, さらに, 被験児2名では自由会話でも流暢性が保たれた.これらのことから, 歌唱により流暢性の高い発話を多く経験したことにより, 自由会話での流暢性が向上した可能性が示唆された.

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