音声言語医学
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口蓋裂乳児の言語指導
加藤 正子岡崎 恵子
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1995 年 36 巻 2 号 p. 298-305

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抄録

口蓋裂に伴う問題は多様であるが, 最も大きなものの1つはスピーチの障害である.口蓋の手術は1歳前後に行われるため, 口蓋裂児の前言語期はちょうど手術前の乳児期にあたり, 子供は裂のある状態でスピーチの獲得を行わなければならない.裂の存在により哺乳・摂食行動や音の産生が制限される.このことは発語器官の感覚・運動学習を困難にさせ, 言語期のスピーチに影響を及ぼしていると考えられる.また高頻度でみられる滲出性中耳炎や親の養育態度も言語学習に影響を与える.したがって, 口蓋裂乳児に対しては哺乳の指導, 喃語音の産生の増大をはかる聴力の管理, 望ましい言語環境を作るために親のカウンセリングを行うことが言語指導の主な内容となる.口蓋裂の治療は多くの専門スタッフからなるチームで行われる.その中で早期から言語治療士がかかわる意味は問題の発見と予防の他に, チームのコーディネーターとして働き, 子供の全体的な発達を援助することにある.

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© 日本音声言語医学会
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