抄録
咽頭期嚥下の神経機序についてわれわれの研究発表を中心に述べた.
嚥下の惹起に必須である咽喉頭粘膜の知覚受容機構は自由神経終末, 味蕾, 数珠状神経終末が広く分布し, これらの神経の起源は上喉頭神経および舌咽神経である.
これらの両神経の中枢投射は延髄の弧束核の間質亜核に収束されている.咽頭期嚥下は反射性に惹起されるが, これらは延髄のパターン形成により制御され, 嚥下関連ニューロンは弧束核のtype Iニューロン, 小細胞性網様体のtype IIニューロン, 疑核のtype IIIニューロンに分類された.
神経機序からみた嚥下障害の病態は皮質延髄路の障害による嚥下惹起遅延型, 脳幹の障害すなわち嚥下のパターン形成障害による嚥下停滞型, 咽頭期嚥下惹起不全型に分類し病態について考察を加えた.