2000 年 41 巻 4 号 p. 395-399
中等度~高度の嗄声を伴う声帯溝症例3例に甲状軟骨形成術I+III型を行った.本法は, 甲状軟骨翼を縦に切離して外側の断端を内前方に落とし込み, 声帯を内方へ圧迫するとともに喉頭の前後径を短縮させる手術である.いずれも, 術後は, 声門閉鎖不全が改善し自覚的に音声の改善が得られたが, 他覚的な聴覚印象では嗄声の改善は軽度であった.
声帯溝の高いスティフネスに起因する声帯振動障害を改善するために, 甲状軟骨形成術を応用して, 前頸部の真皮を有茎で声帯粘膜下に移植する手術を考案した.摘出喉頭による実験では, 甲状軟骨を大きく開窓することで, 声帯靱帯や披裂軟骨声帯突起に容易く到達でき, 移植組織の縫合固定も可能であった.