抄録
左視床梗塞に起因する失語症状を呈した11歳の女児例を報告した.漢字の書字障害と呼称障害, 自由連想場面での語想起能力の低下を呈しており, これらの失語症状の基盤となる病態を, 長期記憶として情報化された漢字および言語情報の取り出しの障害と位置づけ, 情報検索に有効な手がかりに着目した言語訓練を実施した.これによって呼称障害と, 漢字の書字障害は速やかに改善した.語想起能力の低下は明らかな変化は認められなかったが, 自発的に関連する語を想起するなど積極的な態度が現れるようになった.本症例のように特異な言語症状を示す症例に対しては, 症状の基本障害を把握して, 症例に適した訓練方法を実施することが重要であると考えられた.