音声言語医学
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頭部外傷により小児失語症を呈した2症例の言語機能と非言語機能
―長期追跡による回復過程の比較―
玉井 ふみ徳永 要二加我 君孝
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2002 年 43 巻 3 号 p. 261-269

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抄録

転落による重症頭部外傷により言語野を含む広範な左半球損傷をきたし, 小児失語症を呈した重症度および受傷年齢の異なる2例の言語機能と非言語機能の回復経過の特徴と長期的な到達レベルについて比較した.症例1は11歳時に受傷後, 意識障害が4ヵ月間持続し, 重篤な失語症状が認められた.受傷15年後には文レベルの会話が可能であったが, 言語障害が残存した.非言語機能のうち, 視空間的認知構成能力は比較的保たれていた.症例2は3歳時に受傷後約1週間意識障害が認められ, 喚語困難などの失語症状を呈した.受傷6年後の10歳時には日常会話には支障がなかったが, 統語能力や読み書きに障害が認められた.また, 知能の低下が著しく, 言語性知能より動作性知能のほうが低い傾向が見られた.幼小児期における左半球の脳損傷は, その後の発達や学習に限界をもたらし, 知能の低下は複雑な構文能力や読書力などにも影響を及ぼしていると考えられた.2例とも言語機能, 非言語機能とも軽~中等度の障害が残った.すなわち, 重症頭部外傷においては, 左半球のみの障害であっても言語機能, 非言語機能の障害が生涯後遺症として残るものと思われ, 学習面の支援を含む長期にわたる指導が必要と考えられる.

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