palatal augmentation prosthesis (PAP) は, 口腔・咽頭腫瘍術後などの舌機能が低下した症例に対して, 舌口蓋接触を補助するために適用される.良好な構音動作を行うためには予備力をもって舌接触が達成されることが必要であり, PAP装着症例においても同様のことが望まれる.本研究では, 小型圧力センサーを用いて舌接触力, すなわち最大接触力, 構音時接触力およびその差分である予備力を計測することによる, われわれのPAP作製方法を紹介し, その効果を検討した.口腔・咽頭腫瘍術後の構音障害3例を対象に, 最も障害されている音素の改善を目的としたPAPの作製を行った.パラトグラフにて調整したPAPの舌接触力を計測した結果, 症例1では, 良好な構音時接触力, 最大接触力, 予備力が確認できた.症例2, 3においては, 構音時の接触力が小さい点や, 最大努力での接触を指示しても構音時と著変なく, 予備力が小さい点が観察された.同部位のPAPの厚みを増加させることにより, 良好な構音時接触力および予備力が獲得された.以上のように調整されたPAP装着時の語音明瞭度検査の結果では, 非装着時と比べて3例ともに改善が認められた.以上の結果よりPAPの作製に圧力センサーを用いた調整が有用である可能性が示された.