言語発達には臨界期があり, できるだけ早期に聴覚障害を発見することが望ましい.新生児期に発見される, 早期療育が必要な中等度以上の両側聴覚障害の頻度は1000出生中の1~2人に起こるが, ハイリスク児のみのスクリーニングではこの半数しか発見されないので, 全出生児対象のスクリーニングが必要である.近年, 自動ABR, TEOAE, DPOAEなどの簡便な聴覚検査機器が開発され, 多数例対象の検査が可能になった.
平成10年度より厚生科学研究において, 約2万例の新生児に自動ABRを用いて聴覚スクリーニングを実施した結果, 正常新生児群では, 両側要再検率0.2%, 片側要再検率0.42%で, 中等度以上の両側聴覚障害9例 (0.05%) , 片側聴覚障害16例 (0.09%) が発見され, ハイリスク群では両側要再検率3.9%, 片側要再検率3.1%で, 中等度以上の両側聴覚障害19例 (2.2%) , 片側聴覚障害15例 (1.7%) が発見された.
平成12年度より年間5万人規模の新生児聴覚検査モデル事業が予算化され, 現在, 12都道府県で実施されている.平成14年3月の調査で産科医療機関の32%が新生児聴覚検査機器を備えている.一方, 主要な療育・指導機関で指導を受けている0歳児の37%はスクリーニングにより発見された児である.現在, わが国の出生児の30%以上が新生児聴覚スクリーニングを受けていると考えられる.
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