生涯スポーツ学研究
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特別寄稿
21世紀初頭におけるイングランドのスポーツ政策と地域スポーツ
変革,挑戦そして主要テーマ
ハギンズ マイク
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ジャーナル オープンアクセス

2013 年 9 巻 1-2 号 p. 1-10

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抄録
2000年代に入り,世界の新自由主義は各国内,国家間に大きな格差拡大をもたらしている.それは福祉国家でのスポーツ・フォー・オールの停滞をもたらし,またその政策を持たない開発途上国ではスポーツ振興のいっそうの停滞をもたらしている.
現在世界中で特に青少年のスポーツ離れが危惧されている.そうした危惧を払拭するために,IOCは2010年に「Youth Olympic Games」を開催し,青少年へのスポーツ普及策を採り始めた.
各国のスポーツ政策が低調化するなか,イギリス(ここでは特にイングランドを取り上げる)は2000年代に入って,空前絶後ともいわれる国民スポーツ普及政策を採択し,かなりの予算を伴いながら推進されてきた.それは学校スポーツ,地域スポーツそしてトップスポーツのそれぞれにおいて「世界最高のスポーツ体制」を目指した.地域スポーツでは100万人の新たなスポーツ参加者を目指している.そのためのスポーツ施設,スポーツ指導者の確保も重要だが,いったい誰が主体となってどのようにその任務を遂行するのか.それは各スポーツ連盟であり,その傘下にある地域のスポーツクラブである.1950年代以降のドイツでは,スポーツ・フォー・オール政策の内容として「ゴールデンプラン」や「第2の道」そして「トリム運動」を推進し,国家的援助の下に,その受け皿は地域のクラブの拡大とその多種目化(総合型)へ進化(深化)することによって達成した.しかし単一種目の多いイギリスではそうした多種目化は志向せず,またクラブ自体が伝統と階層性を維持して,多くの新規参加者を歓迎しない雰囲気も強い.したがって,100万人増加策も容易ではない.そうしたクラブでの多様な意見も紹介されている.
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© 2013 日本生涯スポーツ学会
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