抄録
尼崎運河とその近隣の港湾において,環境DNA手法のひとつMiFish法を用いて魚類相の種多様性を検出し,富栄養化の進んだ沿岸域での本手法の有効性ならびに課題を明らかにした.種多様性を検出するためには,少なくとも1000 mlのろ過が必要であることが示唆された.運河では計16種が検出され,前年の採捕調査(13種)よりも多く,採捕調査では籠の制約によって評価できなかったと考えられるボラとクロダイ属が環境DNAによって検出された.検出された種数や魚類相を過去のデータと比較し,MiFish法は運河・港湾域での生物多様性モニタリングに有効であると考えられた.課題としては,適切なろ過量を選択する必要があること,結果について実際に生息している魚種であるかを精査する必要があることなどがあげられる.