日本医真菌学会雑誌
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原著
外傷後に生じた皮膚Pseudallescheria boydii感染症の1例
大内 健嗣佐藤 友隆吉澤 奈穂杉浦 丹永尾 圭介矢口 貴志畑 康樹
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2008 年 49 巻 2 号 p. 119-123

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抄録

外傷を契機として発症した皮膚Pseudallescheria boydiiP. boydii)感染症の1例を経験したので報告した.79歳男性.左乳癌に対する集学的治療後,放射線性肺炎に対してプレドニゾロン25 mg/日内服中であった.左膝に擦過傷を受傷し,2週間後より同部位から排膿を認めるようになった.初診時,左膝に長径40 mmの暗赤色局面を認め,表面に小びらん形成と黄白色の排膿を認めた.熱感は乏しく,疼痛を軽度訴えていた.病理組織学的検査では真皮から皮下組織にかけて肉芽腫を形成し,Grocott染色上,分岐した有隔菌糸が多数,確認された.ゲノムDNAを抽出後,internal transcribed spacer(ITS)領域を解析し,P. boydiiと同定した.イトラコナゾール200 mg/日の内服を4週間行ったところ,病変は瘢痕治癒した.P. boydii感染症は,検鏡や病理で分岐した有隔菌糸が観察されるが,形態のみではその他の糸状菌との鑑別が不可能であるため,診断の確定には菌学的検査が不可欠である.生体の免疫力低下を伴う基礎疾患の増加に伴い,今後増加しうる感染症であり,本菌による感染症は抗真菌薬の選択が重要であるため,正しい診断に基づいた治療を開始することが求められる.

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© 2008 日本医真菌学会
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