真菌と真菌症
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深在性真菌症の病理
奥平 雅彦
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1979 年 20 巻 3 号 p. 157-163

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抄録

わが国の内臓真菌症はカンジダ症, アスペルギルス症などの opportunistic infection が大部分を占めている. 病理剖検例でみると最近増加の傾向にあるが, 一層の関心をもつて精査すれば頻度は更に高くなるものと思われる. 実験的研究, 感染組織抽出液を抗原とする沈降反応, 蛍光色素法および蛍光抗体法による検索を通じ, わが国の内臓真菌症の大部分は病理組織学的に病原真菌の属の診断が可能と思われるが, 培養検査の施行と組織レベルでの診断法向上の必要性を指摘した. カンジダ症, アスペルギルス症の病態を示説し, 従前に比して重篤かつ多彩な病像を示す症例が増加しつつある事実と, クリプトコックス症を中心とした病巣内真菌の viability 判定法についてのべた. 肺真菌フロラおよび消化管微生物フロラについての検索成績をふまえて opportunistic fungus infection の発生病理について考察を加え, これは重病人の末期感染症として発現していること, 細菌, ウイルス, 原虫などの多種類の opportunistic pathogenのmultiple infection の1つとしてみられることが多い事実をのべた. そして,そのような認識にたつて, 内臓真菌症の臨床診断, 治療にあたり, また, 剖検例の検索を進めていく必要性を強調した.

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© 日本医真菌学会
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