昭和47年1月より51年12月までの5年間に秋田大学医学部附属病院皮膚科外来を受診した778例の白癬症例から菌の分離を試み以下の成績をえた (1) 白癬患者はこの5年間で666名 (延例数にして778例) で外来患者に対する比率は平均7.9%, 年々増加の傾向がみられた. (2) 培養陽性件数は591件で, その内訳は汗疱状白癬339件, 生毛部白癬203件, 爪白癬49件であり, 培養陽性率は汗疱状白癬79.0%, 生毛部白癬83.9%, 爪白癬45.8%であつた. (3) 原因菌は
T. rubrum 407例,
T. mentagrophytes 168例,
E. floccosum 10例,
M. gypseum, T. violaceum, T. verrucosum 各々2例であつた. (4) 主要3白癬の原因菌は
T. rubrum が常に第1位を占め, 5年間における
T. rubrum の分離率は汗疱状白癬で54.3%, 生毛部白癬で89.2%, 爪白癬で83.7%であつた. また,
T.mentagrophytes は汗疱状白癬の44.8%, 生毛部白癬の3.9%, 爪白癬の16.3%から培養された. (5) 2つ以上の白癬合併例は84例にみられ, 汗疱状白癬と爪白癬の合併が最も多く, 原因菌は
T. rubrum による場合が最も多かつた. (6)
T. rubrum と
T. mentagrophytes の年次的変遷をみるに, 年とともに
T. mentagrophytes に比し
T. rubrum の占める率の上昇がみられた. (7) 生毛部白癬で副腎皮質ホルモン軟膏を使用した既応のあるものは, 9.8%であつた. (8) 頭部浅在性白癬, 深在性白癬は1例もみられなかつた.
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