真菌と真菌症
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20 巻, 3 号
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  • 奥平 雅彦
    1979 年 20 巻 3 号 p. 157-163
    発行日: 1979/10/06
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    わが国の内臓真菌症はカンジダ症, アスペルギルス症などの opportunistic infection が大部分を占めている. 病理剖検例でみると最近増加の傾向にあるが, 一層の関心をもつて精査すれば頻度は更に高くなるものと思われる. 実験的研究, 感染組織抽出液を抗原とする沈降反応, 蛍光色素法および蛍光抗体法による検索を通じ, わが国の内臓真菌症の大部分は病理組織学的に病原真菌の属の診断が可能と思われるが, 培養検査の施行と組織レベルでの診断法向上の必要性を指摘した. カンジダ症, アスペルギルス症の病態を示説し, 従前に比して重篤かつ多彩な病像を示す症例が増加しつつある事実と, クリプトコックス症を中心とした病巣内真菌の viability 判定法についてのべた. 肺真菌フロラおよび消化管微生物フロラについての検索成績をふまえて opportunistic fungus infection の発生病理について考察を加え, これは重病人の末期感染症として発現していること, 細菌, ウイルス, 原虫などの多種類の opportunistic pathogenのmultiple infection の1つとしてみられることが多い事実をのべた. そして,そのような認識にたつて, 内臓真菌症の臨床診断, 治療にあたり, また, 剖検例の検索を進めていく必要性を強調した.
  • 松尾 卓見
    1979 年 20 巻 3 号 p. 164-170
    発行日: 1979/10/06
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Fusarium 菌には多くの重要植物病原菌が含まれている. Fusarium 菌は未耕地の山林土壌などには殆んど存在せず, 農耕土壌には著しく多く存在している. F. oxysporum は各種作物の連作障害原因菌として著名であるが, それぞれが侵す作物は極く限定されており, その作物に関連づけた分化型 (f. sp.) 名を与えて区別している. 日本には本菌の30余の分化型が報告されている. 角膜真菌症から最も多く分離される F. solani についても日本及び U. S. A. で9分化型2レースの植物病原菌が報告されている. これらの分化型及びレースは植物に対する病原性に特色がみられるほか, 大型分生胞子の形態や独立交配群の形成にも特色がみられる. これら植物病原菌のほかに同じ種に属する非病原 Fusarium 菌の雑多な菌系が, 空中・水中・土壌中などに存在している. 筆者の研究室には, 種の同定のために送られて来たヒトの角膜又は爪からの Fusarinm 菌の16株 (F. oxysporum 3, F. solani 12, F. nivale 1) が保存されている. 植物病原菌の F. solani については大型分生胞子の形態にある程度の特色がみられるので, ヒト真菌症菌の F. solani 12株の大型分生胞子の形態を調べることによつて両者の関係を或程度推測することが出来る. その結果,形態が一致するのは極く限られており, ヒト真菌症は種々雑多な菌系から成つていることが判明した. このことからもヒト真菌症の病原菌は opportunistic infection fungi であることが推定される.
  • 宇田川 俊一
    1979 年 20 巻 3 号 p. 171-176
    発行日: 1979/10/06
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    1960年にアフラトキシンが発見されて以来, 食品のかび汚染は世界的に食品微生物領域の注目をうけるところとなつた. 食品変敗の元凶の1つとして, 食品上におけるかびの発育は以下のような生理的諸性質において細菌とはやや趣きを異にする. 1) 好気性, 2) 生育速度, 3) 温度, 4) 湿度, 5) 酸度 (pH). 多くの食品原料は自然のフィールドでかびの侵入にまず暴露される. 農作物の場合,
    かびの一次汚染源は作物である植物およびその環境, たとえば土壌とに分けることができよう. 重要なものとして Aspergillus, Penicillium のある種と同様に, Alternaria, Chaetomium, Cladosporium, Curvularia, Drechslera, Epicoccum, Fusarium, Nigrospora, Pithomyces, Trichoderma, Ulocladium などの属種がある. 二次汚染として食品製造の機械, 包装材料, 作業従事者から持ち込まれることがあつても, 一次汚染菌はしばしばそのまま食品の流通加工段階を通じて生存する. 環境汚染源から由来したかびの残存からみて, 食品の一次汚染に対する正しい評価が更に必要であると思われる.
  • 好井 久雄
    1979 年 20 巻 3 号 p. 177-180
    発行日: 1979/10/06
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    清酒・味噌・醤油などわが国の伝統的醗酵食品は麹菌 (Asp. oryzae) と乳酸菌, 酵母の利用によつて作られるが, 製造工程が開放型式のため, 各種真菌および細菌の汚染も避けられない. 製麹中の麹菌, 汚染カビ, 野性酵母, 汚染細菌の増殖は, 麹基質の水分 (aw) および温度経過などによつて支配され, 菌群間の競合も起こる. 味噌, 醤油仕込後の microflora は高濃度食塩によつて規制され, 耐塩乳酸菌および耐塩・好塩酵母菌株の遷移によつて醗酵が営まれる. 清酒およびビールの醸造では菌株レベルでの管理が要求されるが, 各種野性酵母ならびに Killer 株の汚染の問題がある. また, 食酢では耐酸カビ (Moniliella) もみられる. 汚染カビ, 野性酵母の多くは醸造場の空気環境などに由来するもので, 有用醗酵菌と比較してやや生育温度が高い特長がみられ, このことは真菌症との関連を考える際の一助と思われる.
  • Osamu Hayashi, Toshiro Yadomae, Toshio Miyazaki
    1979 年 20 巻 3 号 p. 181-185
    発行日: 1979/10/06
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    The slide-cultured mycelium of Absidia cylindrospora was stained brightly by either a direct or an indirect immunofluorescence staining method using FITC-conjugated rabbit anti-ACE immunoglobulin. The paraffin-sections of Mucor hiemalis, and Rhizopus nigricans exhibited fluorescence as well as that of A. cylindrospora by the same methods. These facts indicated that immunological cross-reactivity exist among these organisms. An uniformly distribution of the fluorescence was observed on the younger and older hyphae of A. cylindrospora, and the sporangiospores were also stained with the fluorescent conjugate.
  • 俵 勝也, 竹間 盛夫
    1979 年 20 巻 3 号 p. 186-193
    発行日: 1979/10/06
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Nocardia に対する Sulfamethoxazole と Trimethoprim の in vitro および in vivo 併用効果について検討した. in vitro 併用効果について Mueller-Hinton 培地 (馬溶血液,7.5%添加) を使用し checker board titration 法および disk 法により検討したところ, N.asteroides ならびに N. brasiliensis に対し両剤間に相乗的作用のあることが見出された. そこで11種18株の Nocardia に対する両剤の併用効果を agar dilution 法によるMIC値から FIC index にもとづいて比較したところ, 1:1配合時に最大である結果が得られた. in vivo 併用効果についてマウスに N. asteroides を 5 LD50 尾静脈内接種する実験感染症を用いて検討したところ,各種配合比によるST合剤はマウス生存率の増加,平均生存日数の延長を示し協力作用のある成績が得られた. しかしながら各種配合比間におけるこれら併用効果には in vitro のごとき顕著な差異は認められなかつた.
  • 佐藤 勇一, 小関 史朗, 佐藤 壮彦, 高橋 伸也
    1979 年 20 巻 3 号 p. 194-200
    発行日: 1979/10/06
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    昭和47年1月より51年12月までの5年間に秋田大学医学部附属病院皮膚科外来を受診した778例の白癬症例から菌の分離を試み以下の成績をえた (1) 白癬患者はこの5年間で666名 (延例数にして778例) で外来患者に対する比率は平均7.9%, 年々増加の傾向がみられた. (2) 培養陽性件数は591件で, その内訳は汗疱状白癬339件, 生毛部白癬203件, 爪白癬49件であり, 培養陽性率は汗疱状白癬79.0%, 生毛部白癬83.9%, 爪白癬45.8%であつた. (3) 原因菌は T. rubrum 407例, T. mentagrophytes 168例, E. floccosum 10例, M. gypseum, T. violaceum, T. verrucosum 各々2例であつた. (4) 主要3白癬の原因菌は T. rubrum が常に第1位を占め, 5年間における T. rubrum の分離率は汗疱状白癬で54.3%, 生毛部白癬で89.2%, 爪白癬で83.7%であつた. また, T.mentagrophytes は汗疱状白癬の44.8%, 生毛部白癬の3.9%, 爪白癬の16.3%から培養された. (5) 2つ以上の白癬合併例は84例にみられ, 汗疱状白癬と爪白癬の合併が最も多く, 原因菌は T. rubrum による場合が最も多かつた. (6) T. rubrumT. mentagrophytes の年次的変遷をみるに, 年とともに T. mentagrophytes に比し T. rubrum の占める率の上昇がみられた. (7) 生毛部白癬で副腎皮質ホルモン軟膏を使用した既応のあるものは, 9.8%であつた. (8) 頭部浅在性白癬, 深在性白癬は1例もみられなかつた.
  • 第2報 生体膜におよぼす影響
    山口 英世, 岩田 和夫
    1979 年 20 巻 3 号 p. 201-208
    発行日: 1979/10/06
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Econazole は滲透圧安定剤存在下で Candida albicans または Escherichia coli プロトプラストから細胞内 K+, 260nm-吸収物質およびタンパクの急速な遊出を, 等張塩濃度下でヒト赤血球からヘモグロビン遊出 (溶血) をそれぞれひき起こした. C. albicans および E. coli プロトプラストからの K+ 遊出は薬剤濃度のみならず, 薬剤と細胞との濃度比にも依存性を示した. Econazole の K+ 遊出効果はヒト血清もしくは卵黄レシチンにより強く拮抗された. ヒト赤血球の系においても, ほぼ同様の成績が得られた. 以上の成績から econazole は細胞膜との直接的相互作用の結果, 細胞内成分を遊出させること, しかも膜選択性が低く, 真菌のみならず動物, 細菌の細胞膜に対しても親和性をもつことが示された.
  • 生冨 公明, 西川 武二, 北村 啓次郎, 原田 敬之
    1979 年 20 巻 3 号 p. 209-213
    発行日: 1979/10/06
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    最近, 著者らは Trichophyton rubrum よる Sycosis trichophytica の39歳男子例を経験したので報告した. あわせて, 昭和47年より昭和53年8月までに慶大皮膚科で経験した同症5例と最近の本邦報告例とを検討した結果, 最近の本症の原因菌の主体は Trichophyton rubrum であることが判明した. さらに抗 Arthroderma benhamiae 家兎血清を用いた蛍光抗体間接法により, 教室例5例の組織内菌要素を検索し, 菌要素が容易に見い出しうることを確認した.
  • 村田 久雄, 飯島 肇, 直江 史郎
    1979 年 20 巻 3 号 p. 214-219
    発行日: 1979/10/06
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    川崎病患児の糞便から分離した C. albicans の菌体抽出液を, マウスの腹腔内に接種することにより, マウスの心冠状動脈に特異的な動脈炎が作成される事を数回の実験により確認した. この動脈炎は川崎病にみられる血管病変と極めて類似している. これら血管炎の発生機序を解明する1助として, 病原因子の側から実験を試み, 次の様な知見を得た. すなわち, 本血管炎発生に関与する病原因子は, (1) カンジダの菌体成分に由来し, (2) その因子は, 100℃ 1時間の加熱に耐えるが, 18%エタノールにより不活化され, (3) また, その病原因子はカンジダの菌種, 菌株間で差異がみられるなどのことが示唆された.
  • 猿田 隆夫, 仙頭 郁子, 伊藤 愉味子
    1979 年 20 巻 3 号 p. 220-226
    発行日: 1979/10/06
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    皮膚カンジダ症42例から分離された42株のカンジダを生物学的同定法と血清学的同定法を用いて同定し, 両者を比較検討して次の結果を得た. 血清学的同定法では42株中31株 (74%) が同定でき, 生物学的同定法では42株中39株 (93%) が同定できた. 前者において自発凝集を示した株を除くと34株中31株 (91%) が同定でき, 後者の結果とほぼ同じ同定率を示した. 両者の成績が一致した株は, 42株中26株 (62%) にすぎなかつたが, 血清学的同定法において同定ができた31株に限れば両者の一致率は84%であつた. C. albicans の同定における両者の一致率は, 自発凝集などで同定できなかつた株を除けば, 25株中24株 (96%) と高い値を示した. また厚膜胞子陽性株でありながら, 血清学的同定では C. albicans ではないなど両者で若干のくい違いがみられるため, カンジダチェックによる C. albicans の同定には, その手技に熟練した上, 厚膜胞子検出法 (陽性率81%) との併用がのぞましいと考える.
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