真菌と真菌症
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生活環境をとりまくフザリウム菌-とくに植物病原菌とヒト真菌症病原菌の関係-
松尾 卓見
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1979 年 20 巻 3 号 p. 164-170

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抄録

Fusarium 菌には多くの重要植物病原菌が含まれている. Fusarium 菌は未耕地の山林土壌などには殆んど存在せず, 農耕土壌には著しく多く存在している. F. oxysporum は各種作物の連作障害原因菌として著名であるが, それぞれが侵す作物は極く限定されており, その作物に関連づけた分化型 (f. sp.) 名を与えて区別している. 日本には本菌の30余の分化型が報告されている. 角膜真菌症から最も多く分離される F. solani についても日本及び U. S. A. で9分化型2レースの植物病原菌が報告されている. これらの分化型及びレースは植物に対する病原性に特色がみられるほか, 大型分生胞子の形態や独立交配群の形成にも特色がみられる. これら植物病原菌のほかに同じ種に属する非病原 Fusarium 菌の雑多な菌系が, 空中・水中・土壌中などに存在している. 筆者の研究室には, 種の同定のために送られて来たヒトの角膜又は爪からの Fusarinm 菌の16株 (F. oxysporum 3, F. solani 12, F. nivale 1) が保存されている. 植物病原菌の F. solani については大型分生胞子の形態にある程度の特色がみられるので, ヒト真菌症菌の F. solani 12株の大型分生胞子の形態を調べることによつて両者の関係を或程度推測することが出来る. その結果,形態が一致するのは極く限られており, ヒト真菌症は種々雑多な菌系から成つていることが判明した. このことからもヒト真菌症の病原菌は opportunistic infection fungi であることが推定される.

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© 日本医真菌学会
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