真菌と真菌症
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醗酵食品の真菌
好井 久雄
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1979 年 20 巻 3 号 p. 177-180

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抄録

清酒・味噌・醤油などわが国の伝統的醗酵食品は麹菌 (Asp. oryzae) と乳酸菌, 酵母の利用によつて作られるが, 製造工程が開放型式のため, 各種真菌および細菌の汚染も避けられない. 製麹中の麹菌, 汚染カビ, 野性酵母, 汚染細菌の増殖は, 麹基質の水分 (aw) および温度経過などによつて支配され, 菌群間の競合も起こる. 味噌, 醤油仕込後の microflora は高濃度食塩によつて規制され, 耐塩乳酸菌および耐塩・好塩酵母菌株の遷移によつて醗酵が営まれる. 清酒およびビールの醸造では菌株レベルでの管理が要求されるが, 各種野性酵母ならびに Killer 株の汚染の問題がある. また, 食酢では耐酸カビ (Moniliella) もみられる. 汚染カビ, 野性酵母の多くは醸造場の空気環境などに由来するもので, 有用醗酵菌と比較してやや生育温度が高い特長がみられ, このことは真菌症との関連を考える際の一助と思われる.

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© 日本医真菌学会
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