真菌と真菌症
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中枢神経系クリプトコックス症の診断学的検討-脳室内髄液の診断的価値について-
野沢 胤美
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1981 年 22 巻 2 号 p. 160-164

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抄録

Cryptococcus neoformansは中枢神経系に親和性をもち, 多彩な神経症状を示す. 時に全く炎症症状を呈さずに経過し, 種々の疾患と誤診される. 自験例5例中3例は, 全く炎症症状を呈さず, 記憶, 記銘力障害, 計算障害, 見当識障害, 痙攣, 複視錐体路, 錐体外路症状がみられ, 脳梗塞, 脳腫瘍として診断されていた, 初期に結核性髄膜炎, 脳腫蕩と診断される事が多いが, 文献的に脳腫瘍と診断された症例は17例みられ, 4例が気脳写, 脳血管撮影でmass lesionが疑われ, 開頭されている. 診断には, 髄液よりC. neoformansを証明する事が必要であるが, 1回の腰椎穿刺髄液より菌を証明する事は困難である. 19回腰椎穿刺施行するも陰性であつたとの報告もみられる. しかし脳室内髄液の検索は, 早期診断に重要である. 自験例の3例に脳室内髄液の検索を施行した. 1例は正常脳圧水頭症の診断で, 検査と治療目的で, 他の2例は, 頻回な腰椎穿刺でも菌が証明されないため, 積極的にOmmaya's c-s-f resrvoirを装着, 脳室内髄液の検索を行い, その検出率の高い事が証明された. 本邦において脳室内髄液の検索を施行したとの報告は5例みられるが, いずれも減圧または, 脳腫瘍が疑われ, 開頭し偶然に発見されたものである. 髄液検査で感染症が疑われ, 早期に菌が証明されない場合には, 常にcryptococcosisを疑い, 積極的に脳室内髄液の検索が必要である.

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© 日本医真菌学会
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