抄録
今回著者は, 母親の頸管無力症のため妊娠5ヵ月の流産により誕生した超未熟児にみられた皮膚および肺アスペルギルス症の1例を経験した. 患者は生後9日目に死亡したが, 5日目に皮疹の滲出液および気管内チューブの滲出液からの塗抹標本に菌要素が認められた. 9日目に採取した皮膚組織片からの培養で Aspergillus fumigatus が分離された. 剖検による両肺の組織標本では多数の菌糸が自由に伸長するのがみられた. 一方, 皮膚および肺組織内での細胞反応はきわめて少ないのが特徴的であつた. 超未熟児にみられた皮膚および肺アスペルギルス症はこれまでの報告にみられていない. 本症例は今後, 未熟児の感染症対策に貴重な示唆を与えるものと考え, 文献的考察を加え報告した.