真菌と真菌症
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25 巻, 2 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 最近の進歩
    宮治 誠
    1984 年 25 巻 2 号 p. 75
    発行日: 1984/08/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
  • 宮治 誠, 西村 和子, 寺尾 清
    1984 年 25 巻 2 号 p. 76-83
    発行日: 1984/08/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    コクシジオイデス症 (coccidioidomycosis) の原因菌である Coccidioides immitis (コクシジオイデス・イミチス) は自然界や普通の培地上では菌糸形を, 生体内や特殊な培養液中では内生胞子 (endospore) で充された球状体 (spherule 或は sporangium) を形成する. 本菌の二形性 (dimorphism) に関して現在までに光学顕微鏡や透過型電子顕微鏡 (TEM) を用いた研究が多数報告され, 中でも Huppert 等はこの変換過程の詳細な研究を報告している. しかしこれらの手段による観察では本菌の分節型分生子 (arthroconidium) から球状体への変換過程を立体的に理解する事は少々困難であつた. Huppert 等は上記手段の他に走査型電子顕微境 (SEM) を用い立体的な解析も試みているが, 十分とはいい難い.
    今回本菌の寄生環 (parasitic cycle) を SEM を用いて観察したところ, 光顕や TEM では得難い情報が得られたので報告する.
  • 田中 健治, 神戸 俊夫
    1984 年 25 巻 2 号 p. 84-93
    発行日: 1984/08/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    二形性酵母 Candida albicans の細胞分裂と germ tube 形成の過程における細胞微細構造の変化について, 連続超薄切片の電子顕微鏡観察をおこなった. (1) 核分裂は, 核膜上のNAOの間に形成される微小管から成る紡錘体の発達によって進行する. この過程では, 核膜は消失せず, 染色体の凝縮もみられない. (2) 細胞分裂におけるミトコンドリアの数, 形態, 分布について, 連続切片の再構築による三次元的解析をおこなつた. 核分裂の時期に, ミトコンドリアが融合し, 巨大ミトコンドリアが形成されることが明らかにされた. (3) Germ tube において, 先端生長を示唆する小胞が, 先端部に観察されたが, 糸状菌にみられる特徴的集合様式は示されなかつた. ミトコンドリア構造の三次元再構成から, germ tube 形成の初期に, 巨大ミトコンドリアの形成されることが示された.
  • 北島 康雄, 関谷 孝, 鹿野 由紀子, 森 俊二, 野沢 義則
    1984 年 25 巻 2 号 p. 94-101
    発行日: 1984/08/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    病原性皮膚糸状菌の細胞壁の超微細構造について, 最近の知見についてまとめた. 細胞壁内層は, 超薄切片電顕上電子密度の低い厚さ0.1~0.5μmの層であり, キチン (chitin) を中核 (core) にしてグルカン (glucan), マンナン (mannan), ペプチドなどからなる太さ10nmの微細線維と, それを埋めるグルカン, ガラクタン (galactan), マンナン, ペプチドなどを主成分とする無構造なセメント様物質から構築されている. 細胞壁外層は, 電子密度の高い厚さ20~50nmの薄い層であり, 凍結割断法 (freezefracture) では太さ10nmで長さ100~200nmの rodlet が数本束状に集合し, 互いに交錯した網目状の構造を呈する. 本実験で得られた結果によると, Trichophyton mentagrophytes, Trichophyton rubrum, Microsporum canis, Microsporum gyseum の菌糸, 大分生子, 小分生子間で, rodlet の長さには差が特に認められなかつた. Epidermophyton floccosum では rodlet 構造は認められなかつた. 一方, rodlet の配列方向は, 若い菌糸では菌糸長軸に対して直角に, 分生子の基部では環状に配列する傾向がみられた. rodlet layer (細胞壁外層) は,ペプチドを主成分とし, 多糖体を主とする細胞壁内層と異なり, 生化学的および構築的な観点からして, 細菌細胞壁との類似性が示唆された.
  • 金綱 史至
    1984 年 25 巻 2 号 p. 102-107
    発行日: 1984/08/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Paracoccidioides brasiliensis, Blastomyces dermatitidis 及び Histoplasma capsulatum の酵母形及び菌糸形細胞壁の生化学的及び形態学的研究に基づいて, 酵母形から菌糸形への移行の機構を考察した. 環境の変化により酵母形細胞壁外層の成分の生合成が停止するため, 軟化した酵母形細胞壁内層が膨出する時には外層によつて作られたトンネルを通る事になる. この時, 内層に存在する直鎖多糖体 (キチン) の線維は, 全く機械的に, 多少なりとも長軸方向に向けられる. 空間的制限のため, 長軸方向の線維の合成は順調に進行するが, それに直角方向の線維の合成は制限をうけるか, 或いは合成が進行した場合も円筒を取り巻いて長軸方向の線維に恰も「タガ」をはめた形となる. この様な状態はトンネルを出てからも続き, 長軸方向の線維の生合成が先端部で活発に行われて apical growth の状態となる. 空間的制限は無くなつているので, subapical region では線維の合成は凡ゆる方向に進み, 乱雑に交錯して円筒形は益々強固となり, 分枝多糖体や蛋白質と絡み合つて強固な菌糸形が完成する. この仮説で最も重要な因子は酵母形細胞壁外層の合成停止によるトンネルの形成である.
  • Arthroderma vanbreuseghemii の微細構造
    田中 壮一
    1984 年 25 巻 2 号 p. 108-117
    発行日: 1984/08/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Arthroderma vanbreuseghemii の有性生殖過程の微細構造を, 透過型電顕を用いて観察した. 本菌においては, ascus の辺縁に生じた double membrane system の嵌入により減数分裂後の娘核が delimitation される. 次いで, double membrane system の intercisternal space の拡大及び outer membrane の変化により ascospore cell wall が形成され ascospore maturation に至る. その後 ascusのcytoplasma 及び cell wall の融解により evanescent 型の ascospore discharge がおこる. これらの過程は, 他の子嚢菌での報告と本質的に一致しており, 本菌以外の白癬菌においても同様であろうと想像される.
    さらに, 電顕組織化学を用いて, この過程に伴つて出現する concentric membrane system に一致して carbohydrate の集積及び thiamine pyrophosphatase の活性が局在することを示した. この結果は, lomasome 様構造を示すこの細胞内膜系が, 高等植物における Golgi 体の functional equivalent として ascosporeのcell wall material の生成, 分泌に関与している可能性を示唆している.
  • 横田 勝司, 鎌口 有秀, 蝦名 敬一, 坂口 平
    1984 年 25 巻 2 号 p. 118-124
    発行日: 1984/08/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Asp-hemolysin の溶血活性はHgCl2ならびにヨウ素の添加によつて著しい阻害を受けた. Asp-hemolysin-Hg2+ の静脈注射でマウスに強い致死性を示したが, Asp-hemolysin-Hg2+ の腹腔内注射と Asp-hemolysin-I2 の静脈, 腹腔内注射は, いずれも致死活性が弱かつた. 水銀で不活化したAsp-hemolysin の溶血活性はマウス肝臓および腎臓ホモジネート抽出液の添加によつて著しく回復したが, 卵アルブミン, ポリペプトン, プロテオースペプトンなどの蛋白標品の添加では, わずかであつた. マウス血清の添加では全く観察されなかつた. しかし, ヨウ素で不活化した毒素の溶血活性の回復は, 臓器ホモジネート抽出液, 血清ならびに蛋白質の添加によつてもみられなかつた. Asp-hemolysin の単独では, 蛋白分解酵素の作用を受けなかつたが, 水銀不活化毒素は, α-chymotrypsin, trypsin, pronase P あるいは A. fumigtus protease などで分解を受けた. さらに trypsin で150分反応させた Asp-hemolysin-Hg2+ は溶血活性陰性であつたが, マウス致死性はなお残存した. 50℃, thermolysin で処理した毒素は溶血と致死の両活性を完全に消失した.
    以上の結果から, Asp-hemolysin の溶血活性と致死活性の活性部位が異なることが示唆された.
  • 村瀬 勢津子, 吉山 友二, 朝長 文弥, 久米 光
    1984 年 25 巻 2 号 p. 125-138
    発行日: 1984/08/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    抗細菌剤に比較して抗真菌剤の開発は著しく立ち後れている. この様な現状から数少ない抗真菌剤の併用による治療効果に期待がもたれ, なかでもフルシトシン (5-FC) とアムホテリシン B (AMPH) との併用は広く行なわれている. しかしながら, この両者の併用効果の機作は必ずしも明確ではない.
    我々は in vitro および in vivo において両者の間に明らかに併用効果があることを確認した上で, この併用効果の機作を明らかにすべく一連の実験を企画した.
    すなわち, AMPH の混在によつて何等の影響も受けない5-FCの分別定量法を HPLC 法によつて確立し, 本法を用いて, 5-FCと AMPH とが混在する培養系における C. albicans 菌体内5-FCの定量を系統的に行なつた. また両剤併用時における5-FCのラット体内動態についても併せ検討し, それぞれ単独使用群との比較を行なつた.
    その結果, 供試菌菌体内の5-FC量は, 5-FCの単独使用群に比較して AMPH が混在する実験群で明らかに増加し, しかも添加された AMPH の濃度が高い程, 菌体内5-FC量も増加する傾向を示した.
    また, 5-FC単独投与群と両剤併用群との比較において5-FCのラット体内動態に有意の差はほとんどなかつた.
    以上の成績から, 両剤の併用効果 (相乗効果) の重要な機作の1つはAMPHが5-FCの菌体内取り込みを直接促進するためと結論した.
  • Kazuko Nishimura, Makoto Miyaji
    1984 年 25 巻 2 号 p. 139-146
    発行日: 1984/08/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    A new genus, Hortaea Nishimura et Miyaji, is proposed to accommodate Cladosporium werneckii, the etiological agent of a superficial mycotic infection, tinea nigra, and Hortaea werneckii (Horta) Nishimura et Miyaji comb. nov. is provided.
    The fungus is characterized by a unique sympodial conidiogenesis accompanying an annellidic one, which has been observed firstly using a scanning electron microscope as follows.
    Conidiogenous loci arise from ampullaceous cells formed laterally or terminally on hyphae, lateral branches and projections on hyphae, or directly from the lateral walls of hyphae. These loci elongate and swell in accordance with the production of solitary, terminal conidia, and become thick cylindrical, obclavate or truncate rachises. Bud scars are found on the surface of the rachises, but denticles are absent. Round scars are observed in a few conidiogenous cells on the rachises, but most of the conidiogenous cells show remnants of scars shaped like sickles, half moons or scales. Regardless of the bud scar shapes, a spiral can be drawn on a rachis by tracing the centers of the scars. Namely, the conidiogenous cells are sympodulae because the bud scars are arranged on them sympodially. Such sympodial conidiogenesis is also found in most of the yeast-like conidiogenous cells.
    Furthermore, there are a few conidiogenous cells with annellatons, which are irregular in comparison with those of E. dermatitidis or E. jeanselmei.
    These results indicate that H. werneckii is definitely different from the other species of the genus Exophiala and other sympodial dematiaceous fungi.
  • 第2報 抗真菌作用に及ぼす諸因子の影響
    岩田 和夫, 山本 容正
    1984 年 25 巻 2 号 p. 147-157
    発行日: 1984/08/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Imidazole 系新抗真菌剤 sulconazole nitrate の抗真菌作用に及ぼす諸因子の影響について諸種病原真菌に対し検討した.
    本剤は広域の強力な抗真菌スペクトルを有し, とくに皮膚糸状菌を含む菌糸形成菌に対し, 酵母および酵母状真菌よりも強く発育を阻止したが, Candida 属, とくに C. pseudotropicalis または Cryptococcus neoformans に対し, 強力な発育阻止効果を発揮した. 接種菌量の増大, 血液添加の菌発育阻止作用に対する影響は軽度であつた. 本剤は培地pHが酸性側で, 液体培地よりも固形培地上で, より強い発育阻止効果を示す傾向が認められるが, 菌種菌株により相違があつた. C. albicans, C. pseudotropicalis について検討した限り, 強い殺菌作用を有することも認められた. また, 休止期の細胞よりも発育期の細胞に, より強く殺菌的に作用した.
  • 第3報 実験的白癬菌感染に対する治療効果
    岩田 和夫, 山本 容正
    1984 年 25 巻 2 号 p. 158-162
    発行日: 1984/08/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Imidazole 系新抗真菌剤 sulconazole nitrate は Trichopyton mentagrophytes によるモルモット皮膚の実験的感染に対し, polyethylene glycol に1%または2%の割合に混和して, 1日1回, 2週間連続して感染部位に塗布した結果, 症状を改善し, 接種菌の逆培養において陰性化を促進し, 顕著な治療効果を有することが認められた. Sulconazole nitrate の1%剤投与は clotrimazole に優るとも劣らない効果を示し, 2%剤投与ではその効果はさらに顕著であつた.
  • 仲 弥
    1984 年 25 巻 2 号 p. 163-170
    発行日: 1984/08/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    皮膚スポロトリコーシスの原因菌である Sporothrix (S.) schenckii には,, 菌株により臨床病型, 酵母形細胞形態, 発育温度等の異なるものが認められ, 同一菌種とは考えにくい点もある. 著者はこの S. schenckii 28株について, 臨床病型, 酵母形細胞形態, 発育温度を観察し, その相互関係を検討するとともに, これらの異なつた特徴を有する9菌株の菌細胞から DNA を抽出精製し, その熱変性曲線より DNA の GC 含量を測定することによつて, 本菌の菌種内相違を検討した. その結果, 菌株により臨床病型, 酵母形細胞形態, 発育温度の差はみられたものの, それぞれの相互関係は認められず, DNA の GC 含量も微妙な差はあるものの, 極めて近似した値を示した. 以上から, これらの相違は現時点では異なつた菌種というよりも, 同一菌種内の相違と考える方が妥当と思われた.
  • 石橋 康久, 一戸 正勝
    1984 年 25 巻 2 号 p. 171-176
    発行日: 1984/08/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    54歳男性の左眼に認められた角膜真菌症に対し当初 ketoconazole の内服を試みたが, 1日300mg, 12日間の投与にても効果が認められなかつた. そこで miconazole の点滴静注に変えたところ, 開始より4日目頃から改善傾向が認められた. 18日間, 総量16,400mgの投与により視力は0.05より0.7に改善し, 角膜に淡い混濁を残して治癒した. 投与中に血清のリン脂質および中性脂肪などが上昇を示したが, 投与中止後比較的速やかに正常化し, それ以外の重篤な副作用は認められなかつた.
    本例の原因菌は Botryodiplodia theobromae と同定されたが, ヒト病変部より分離されたものとしては本邦初報告と考えられる. 本菌は熱帯および亜熱帯に広く分布し, バナナ, カカオ, サトウキビなどの植物病原菌として知られている. 本菌による角膜真菌症は世界の文献上8例報告されており, 本例は9例目にあたるものと思われる.
  • 高瀬 孝子, 上野 賢一, 須磨崎 亮, 美誉 志康
    1984 年 25 巻 2 号 p. 177-181
    発行日: 1984/08/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    今回著者は, 母親の頸管無力症のため妊娠5ヵ月の流産により誕生した超未熟児にみられた皮膚および肺アスペルギルス症の1例を経験した. 患者は生後9日目に死亡したが, 5日目に皮疹の滲出液および気管内チューブの滲出液からの塗抹標本に菌要素が認められた. 9日目に採取した皮膚組織片からの培養で Aspergillus fumigatus が分離された. 剖検による両肺の組織標本では多数の菌糸が自由に伸長するのがみられた. 一方, 皮膚および肺組織内での細胞反応はきわめて少ないのが特徴的であつた. 超未熟児にみられた皮膚および肺アスペルギルス症はこれまでの報告にみられていない. 本症例は今後, 未熟児の感染症対策に貴重な示唆を与えるものと考え, 文献的考察を加え報告した.
  • 岩田 和夫
    1984 年 25 巻 2 号 p. 182-186
    発行日: 1984/08/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
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