真菌と真菌症
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Miconazole 点滴静注が有効であつた Botryodiplodia theobromae による角膜真菌症
石橋 康久一戸 正勝
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1984 年 25 巻 2 号 p. 171-176

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抄録
54歳男性の左眼に認められた角膜真菌症に対し当初 ketoconazole の内服を試みたが, 1日300mg, 12日間の投与にても効果が認められなかつた. そこで miconazole の点滴静注に変えたところ, 開始より4日目頃から改善傾向が認められた. 18日間, 総量16,400mgの投与により視力は0.05より0.7に改善し, 角膜に淡い混濁を残して治癒した. 投与中に血清のリン脂質および中性脂肪などが上昇を示したが, 投与中止後比較的速やかに正常化し, それ以外の重篤な副作用は認められなかつた.
本例の原因菌は Botryodiplodia theobromae と同定されたが, ヒト病変部より分離されたものとしては本邦初報告と考えられる. 本菌は熱帯および亜熱帯に広く分布し, バナナ, カカオ, サトウキビなどの植物病原菌として知られている. 本菌による角膜真菌症は世界の文献上8例報告されており, 本例は9例目にあたるものと思われる.
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© 日本医真菌学会
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