抄録
川崎病患児では, その急性期に一過性のIgE抗体上昇がみられることが知られている.
我々はこれまでに作成し得たカンジダによるマウスの実験的動脈炎モデルにおける, 抗カンジダIgE抗体量を, PCAの手法を用いて測定すると共に, 動脈炎発生頻度との関連性を検討した. その結果, この血管炎モデルにおいても, 抗カンジダIgE抗体が証明され (PCA価1), この際, カンジダ抗原に百日咳菌ワクチンを添加, 感作すると同IgE抗体が増強されることを認めた. しかし, この百日咳菌ワクチンのIgE抗体増強効果は, その接種時期により異なり, 抗原の第1次接種時に添加, 免疫された群 (PCA価80) は, 第2次接種時に添加, 免疫された群 (PCA価10) に比し, 遙かに高いIgE抗体価を示した. また, 動脈炎の発生頻度は, それぞれの免疫群で40, 87及び55%と, PCA価と平行した発生率を示した. これに反し, 抗原を第2次接種時に1 roundのみ接種した群では, PCA及び動脈炎の発生は何れも陰性であった. これらの成績はIgE抗体と動脈炎発生との間に, 何らかの関連性が存在するものと考える.
また, IgE抗体価の経時的推移を検索した結果, その存在は抗原接種後3日でみられ (PCA価20), 10日でピークに達し (PCA価80), 24日には急激に減少した (PCA 1). これは川崎病患児にみられるIgE抗体の経時的推移と類似するものと思われる.