我々は, 牛乳房炎の1例から本邦で初めて
Prototheca zopfii を分離した.
本症例は発熱を伴う感染分房の発赤・腫脹・硬結に始まり, 右前・左後分房から7ヵ月間にわたり
Prototheca が分離された難治性の乳房炎であった.
この原因となった
P. zopfii はSDAによく発育し, 集落は白色酵母様を示した. 増殖は
Chlorella 属にきわめて類似する autospore formation を示した. 資化試験においては, glucose, glycerol, ethanol を資化したが, sucrose, trehalose,
n-butanol,
n-propanol は資化しなかった.
参考株である
Prototheca とともに, API20Cを用いて分離株の資化試験を実施したところ, 参考株
P. zopfii と同様, glucose, glycerol を資化した.
本分離株について薬剤感受性試験を行なったところ, SM, KM, AMPH-B, NYSに対して若干の感受性を示した.
分離株の培養濾液抗原を用いたゲル内沈降反応においては, 本症例の血清との間に明瞭な沈降線を認めた.
分離株を用いてのマウス感染実験では, 静脈内, 腹腔内, 精巣内接種のいずれにおいても死亡するマウスは認められなかったが, PAS染色による病理組織学的検索において, プレドニゾロン処置マウスの肝臓およびプレドニゾロン処置・未処置マウスの精巣に典型的な
P. zopfii の感染像を認めた.
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