真菌と真菌症
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26 巻, 3 号
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  • 新井 正, 占部 治邦
    1985 年 26 巻 3 号 p. 115
    発行日: 1985/09/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
  • 山口 英世
    1985 年 26 巻 3 号 p. 116-125
    発行日: 1985/09/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    1970年代に入って真菌症に対する医学的関心が高まるとともに, 抗真菌剤の開発研究が国内外で急速に進展した. その結果, この10年の間に深在性真菌症に対する系統的 (経口) 化学療法剤としてピリミジンアナログ flucytosine が, また表在性真菌症の局所的治療に有効な clotrimazole, miconazole (nitrate), econazole (nitrate), isoconazole (nitrate) 以上のイミダゾール系薬剤, N-ヒドロキシルピリドン系薬剤 cyclopiroxolamine, ベンツアミド系薬剤 2-n-hexyloxy benzamide などがわが国においても実用化された (Fig. 1). しかも, よりすぐれた抗真菌剤を求める臨床医家の要望とそれに応えるべく製薬企業の研究意欲は益々高まりつつあるように見受けられる.
    ここではごく最近上市された抗真菌剤および現在開発研究がほぼ終了したかまたはその途上にあって近い将来実用化されることが期待される抗真菌性物質を対象に, in vitro および in vivo 抗菌活性, 作用機作などの生物学的活性に関してなされてきた国内を中心とする研究の情況をとりまとめて紹介したい.
  • とくに Amphotericin B と Flucytosine について
    久米 光, 村瀬 勢津子, 望月 真弓
    1985 年 26 巻 3 号 p. 126-132
    発行日: 1985/09/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    内臓真菌症の治療薬として現在最も広く用いられている amphotericin B (AMPH) と flucytosine (5-FC) との併用効果については今尚釈然としない. そこで我々は両剤の併用効果の有無およびその程度を確認するとともに, 併用効果の発現の機作を明らかにすべく一連の検索を行なった.
    チェッカーボード法による両剤の併用効果は, いずれも combined action index は20以上で両剤の間に極めて強い協力作用が認められた. また, 感染治療実験においても累積死亡率および病理組織学的検索成績の両者で評価した結果, 明らかに両剤の間に併用効果がある事が確認された.
    そこで, 高速液体クロマトグラフィーを用いて両剤の分別定量法を確立するとともに, 本法によって諸種の濃度AMPHが混在する培養系における供試菌菌体内への5-FCの取り込み量を比較検討した. また, 両剤併用時における5-FCのラット体内動態を単独投与群との比較において検討し, 従来基礎的に明らかではなかったAMPHと5-FCとの併用効果の重要な機作の1つとしてAMPHが, 5-FCの吸収, 排泄および臓器内移行濃度に何等の影響を及ぼすことなく, 菌体内への5-FCの取り込みを促進するのであろうことを示唆する成績を示した.
  • 宇野 潤
    1985 年 26 巻 3 号 p. 133-139
    発行日: 1985/09/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    抗真菌性化学療法剤の問題点を, それらの作用機序から指摘し, 今後の抗真菌性化学療法剤開発の一つの方向としての薬剤併用について考察した.
    抗真菌剤を作用機序で分類すると, 臨床使用の抗真菌剤の多くは選択毒性の低い細胞膜障害作用を有するものが多いことがわかる. 哺乳動物細胞への抗真菌剤の毒性をL1210培養細胞への細胞毒性 (ED50) として検討した結果, flucytosine が最も毒性の低い値の100.1μg/mlを示したが, その他の医薬はほとんど4~8μg/mlであり医薬の間には顕著な違いは観察されなかった. 医薬以外の試薬は, 毒性が高く医薬との間に大きな相違がみられた.
    毒性を高めずに抗菌力を増強する試みとして抗真菌剤の併用を検討したところ, イミダゾール系抗真菌剤と一部の細胞膜障害作用を有する抗真菌剤に特異な相乗作用が観察された. 相乗作用の顕著なものは, copiamycin とイミダゾール系抗真菌剤の併用であった. 両薬剤の併用は, in vitro みならず in vivo においても強い相乗作用を発揮し, しかも細胞毒性の増強は観察されなかった.
  • 鈴木 益子, 大川 喜男, 鈴木 光, 鈴木 茂生
    1985 年 26 巻 3 号 p. 140-144
    発行日: 1985/09/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    真菌症の免疫化学療法への実験的アプローチとして, 免疫賦活剤としてキチン, キトサンを, 抗真菌剤として amphotericin B (AMPH) および flucytsine (5-FC) を用い, マウス Candida albicans 感染に対する併用効果を検討した. その結果, キチン, キトサン, 抗真菌剤それぞれの単独投与群に比べ, キチン, キトサンと抗真菌剤併用群がより強い感染防御効果を示した. その作用機作を検討した. (1) キチン, キトサン投与マウス腹腔付着性細胞 (PAC) の C. albicansin vitro 殺菌能におよぽす上記抗真菌剤の効果について検討した結果, 殺菌率はキチン, キトサン投与マウスPACと抗真菌剤併用で最も高かった. (2) キチン, キトサン投与マウス腹腔浸出細胞 (PEC) の myeloperoxidase (MPO) 活性は未処理マウスPECに比べ顕著な増加を示した. 又, AMPH投与マウスPECのMPO活性も未処理群よりも高かった. 以上のことから, キチン, キトサンの抗真菌剤との併用効果は活性化食細胞による殺菌効果と抗真菌剤による直接殺菌効果とが相まって表われるものと考えられる.
  • 楠 俊雄
    1985 年 26 巻 3 号 p. 145-151
    発行日: 1985/09/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    白癬, 皮膚カンジダ症, 癜風に対する治療の現況について報告する. これら表在性皮膚真菌症に対する治療の主力は, イミダゾール系抗真菌剤である. その理由は, 抗菌スペクトルが広く, 白癬, 皮膚カンジダ症, 癜風のすべてに有効で, グラム陽性球菌にも抗菌活性を示し, 副作用も少ないからである. 本邦においてすでに実用化されているものでは, clotrimazole, miconazole, econazole, isoconazole, tioconazole があり, 現在開発中の sulconazole, bifonazole, cloconazole, oxiconazole, ketoconazole をいれると10種を数える. 特に ketoconazole はイミダゾール系唯一の経口剤であるということで, その有用性とともに注目されている. Ketoconazole について, 著者らの研究班が行った爪白癬に対する griseofulvin との double-blind test の結果をみると, 総合臨床効果において有効率90.7%であり, griseofulvin の有効率85%と比べ, 両者に有意差を認めなかった. また, これまで種々の抗真菌剤に反応しなかった13歳女の慢性皮膚粘膜カンジダ症に本剤を用い劇的効果をみた. しかし, 稀に重篤な肝障害を生じることがあり, 慎重な使用が望まれる. 他にイミダゾール系類似の抗菌スペクトルを有するものとして ciclopirox olamine があり, 外用抗白癬剤, 抗カンジダ剤として使用されている. また, tolciclate は, トルナフテート系の新抗白癬剤で皮膚糸状菌に対し, 優れた抗菌力を有している.
  • とくにヨウ化カリウムのスポロトリコーシスにたいする作用機序について
    本房 昭三, 古賀 哲也, 山野 龍文, 占部 治邦
    1985 年 26 巻 3 号 p. 152-158
    発行日: 1985/09/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    スポロトリコーシスと黒色真菌感染症の治療現況を報告するとともに, これらの疾患にたいする抗真菌剤の適応について述べた. スポロトリコーシスの治療としてはヨウ化カリウム (KI) の投与あるいは温熱療法が一般的であり, また使用さるべき治療法である. Flucytosine (5-FC) とケトコナゾールは数例において有効であったと報告されており, KIあるいは温熱療法が奏効しない場合には有用であるかも知れない. 黒色真菌感染症の治療としては, 病変が皮膚に限局され, かつ広範囲でない場合には外科的切除が first choice である. 現時点で黒色真菌感染症にもっとも有効な薬剤は5-FCであり, リンパ節転移などの内臓病変を有する場合, 広範囲の病変を有する場合には5-FC, あるいは5-FCとアムホテリシンB点滴静注の併用が推奨される.
    KIの作用機序についても検討を行なったが, KI投与後血中にヨウ素 (I2) を検出することは出来なかった. しかしヨウ化物イオン (I-) は30~60ppmの濃度に達した. In vitro の実験ではKI(1×10-4M)+H2O2(5×10-5M)+peroxidase, KI+H2O2+Fe++の条件下で Sporothrix schenckii の酵母形は5分後に完全に殺菌された. KI+I2(5×10-6M) の条件下でも5分後にはほぼ完全な殺菌効果がみられた. KI+H2O2 の条件下では120分後に完全な殺菌効果が認められた.また3×10-4MのKIと5×10-5MのH2O2の存在下では2×10-6M程度のI2が産生された. これらの結果から, peroxidase-iodide-H2O2 system, iron-H2O2-iodide system に加えてKIから酸化されて生じたI2が直接殺菌作用を示すためにスポロトリコーシスにおいてKIが特異的に奏効するのではないかと考えた.
  • 渡辺 一功
    1985 年 26 巻 3 号 p. 159-166
    発行日: 1985/09/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    近年, 高度の医療に伴う抗細菌性広域抗生物質, 副腎皮質ホルモン, 抗腫瘍剤, 免疫抑制剤などが広く使用されるようになってから世界的に真菌症の増加が指摘されており, なかでも内臓真菌症が opportunistic infection として著増してきていることは周知のとおりである.
    治療に関して細菌感染症の化学療法が長足の進歩をとげたのに比較して, 内臓真菌症の化学療法は著しく立ち遅れているといわざるをえず, 開発されてから約30年が経過した amphotericin B (AMPH) が, その強い毒性にも拘らず使用されており,“古い薬”, そして“新らしい治療”といわれているように, 今日でも第1選択剤として使用されているのが現況である.
    近年開発されたイミダゾール系の miconazole (MCZ), ketoconazole (KCZ) は諸外国では市販されているが, 本邦では未だ市販されておらず, 臨床経験も少なく, その評価は未だ確立されておらず今後の問題であるが, 我々の経験した臨床治験成績ではまずまずの感触をえている. Flucytosine (5-FC) は単独では内臓真菌症の治療には適切でなく, AMPHとの併用で使用すべき薬剤である.
    新らしい抗真菌剤の開発もすすめられているが, なお今後の検討をまたねばならないのが現況である. このためにも現有の数少ない抗真菌剤を有効に使用する工夫や研究が重要な課題である.
  • 松崎 統, 伊藤 章
    1985 年 26 巻 3 号 p. 167
    発行日: 1985/09/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
  • 笠井 達也
    1985 年 26 巻 3 号 p. 168-175
    発行日: 1985/09/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    白癬と皮膚カンジダ症の諸統計に自験16年間の資料を併せ, その主要病型の年次変動, 性・年齢別分布を概観, 白癬菌相の地域差にも若干ふれた. 白癬の対新来患者比は, 全体では4乃至12%の幅があるが, 各施設毎には多くは2%内外の小幅の変動に止まる. 足白癬の症例数は年々増加傾向にある. 性別では古い集計は男子優位で, 年齢分布は性差がないが, 近年は女子が若干優位で20代をピークに加齢と共に減ずるのに対し, 男子は30代から50代まで多い. 小児例も近年増加傾向にあり, 大都市ほど著しい傾向がある. 手白癬の性・年齢別分布も足白癬に近似しているが, 男子は大半足白癬に併発, 女子は手単独例がやゝ多い. 爪白癬は男子では高年齢層まで多いが, 女子では青年期に多く加齢とともに急減する. 体部・股部白癬全体では症例数の年次変動幅は小さいが, 体部白癬は増加, 股部白癬は減少傾向をみる. 体部白癬には男女差がないが, 股部白癬は男子に圧倒的に多く, 近年青年層の減少が著しい. 体部白癬の年齢分布は集計により開きがあり一定しない. 頭部白癬, 白癬性毛瘡とも増加している. 皮膚カンジダ症では, 乳児寄生菌性紅斑が1971~1975年に全国的に急増したのち激減. 間擦疹はほゞ同時に増加し, その後の減少度が小さく, 近年微増傾向. 他方指趾間びらん, 爪囲爪炎は変動が少ない. 間擦疹は性差を認めぬのと, 男子優位の両報告あり. 手の2型は女子, ことに主婦層がその主体をなす.
  • 中嶋 弘, 黒沢 伝枝, 高橋 泰英
    1985 年 26 巻 3 号 p. 176-187
    発行日: 1985/09/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    わが国における1983年末までの, 1) 皮膚スポロトリコーシス, 2) 皮膚黒色真菌感染症, 3) 皮膚クリプトコックス症を臨床統計ないし疫学的に検討した. 1) 皮膚スポロトリコーシス: 最近では症例報告数は頭打の状態にあり, 施設あたりの一括報告 (最高200例) が増加していた. 集計し得た1,396例は人口10万対 (累積患者報告数) では1.18 (人) であった. 北限は秋田市であった. 組織内菌要素は発見率が上昇し, また多数~無数 (11例, うち10例はステロイドを使用) にみられる症例が増加していた. 自験95例を年次的にみると1954年より増減傾向はほとんどなかった. 2) 皮膚黒色真菌感染症: 集計し得た344例は人口10万対では0.29 (人) であった. クロモミコーシス302例 (増加傾向なし), 皮下の膿瘍~嚢腫39例 (増加傾向あり), 黒色癬3例 (新登場), 菌腫1例 (省略) であった. 原因菌では Fonsecaea pedrosoi 267例, Phialophora verrucosa 7例, Exophiala dermatitidis 16例, Exophiala jeanselmei 28例, Dactylaria gallopava 1例, Exophiala werneckii 3例, その他22例で, 多様化の傾向がみられた. 3) 皮膚クリプトコックス症: 集計し得た54例は人口10万対では0.05 (人) であった. 最近5年間は軽度増加傾向にあった. 皮膚限局型は17例, 皮膚先行型は7例, 続発型は30例であった. 皮膚以外の病変では中枢神経系が44.4%, 肺が18.5%で多かった. 基礎疾患は病型により異なるが53.7%にみられ, 血液疾患 (31.3%) が多かった.
  • 石橋 康久, 松本 雄二郎
    1985 年 26 巻 3 号 p. 188-192
    発行日: 1985/09/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    わが国における角膜真菌症について検討するため1983年1月より12月までに角膜真菌症と診断された症例の有無, およびそれらがどのように診断, 治療されているかなどについてアンケート調査を行なった. 対象は昭和59年2月現在で日本眼科学会の専門医制度の研修施設に認定されている619施設である.
    1. 回答は344施設 (55.6%) より得られた344施設のうち症例のあったものが97施設 (28.2%) で合計176症例であった. これらの日本における分布を示した.
    2. 角膜真菌症と診断された176例のうち角膜実質の鏡検によるものが12.5%, 培養によるものが13.1%, 鏡検および培養によるものが21.0%, 経過および治療などによるものが53.4%であった.
    3. 治療に用いられた薬剤はピマリシンが最も多く82.4%であり, 次いでアムホテリシンB32.4%, 5-FC12.5%であった. その他ミコナゾール, ナイスタチン, ケトコナゾール, クロトリマゾールが少数使われていた.
    4. 診断については88.1%が難しい. 7.6%が容易であると答えた. 治療については難しいが93.3%であり, 容易であるが3.2%であった. 眼科用の抗真菌剤の必要性についてはほとんどが必要であると回答した.
  • 伊藤 章
    1985 年 26 巻 3 号 p. 193-199
    発行日: 1985/09/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    アンケート・文献より集めた重複例をチェックした1981年までの2,913例の内臓真菌症につき, 統計的, 疫学的に集計した.
    症例の内訳は, アスペルギルス症1,124例, カンジダ症824例, クリプトコックス症663例, ムーコル症131例, ノカルジア症52例, 重複感染真菌症119例で, これらについて年度別, 性別, 年齢別, 地区別に疫学面からの検討を行うとともに, 病型, 続発症例の割合, 基礎疾患, 診断法, 予後についても検討した.
    また, アンケート回収率, 報告例の割合, 病理剖検輯報記載状況などからわが国における内臓真菌症例数についても推測した.
    更に, 集計年代の違いによる内臓真菌症の変化についても述べた.
    これらの集計は, わが国における内臓真菌症の現状をみる上で一つの素材となり得るであろう.
  • アンケート調査及び市販薬販売量の観点から
    望月 真弓, 朝長 文弥, 久米 光, 奥平 雅彦
    1985 年 26 巻 3 号 p. 200-206
    発行日: 1985/09/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    我々は無作為に選択した20歳未満の学生を含む成人男女3,076名を検索対象に「みずむし」に関するアンケート調査を実施し, 同時に「みずむし」薬の推計生産量および消費量について検索し, この両者から「みずむし」の潜在患者数を推計した.
    アンケートの成績では, 罹患経験が「有る人」が37.8%,「かも知れない人」が11.1%,「ない人」が52.5%で, 性別には女性に比べ男性の罹患経験の頻度が高く, 約2倍であった. また年齢別分布では40歳代から50歳代にピークを示し, 20歳未満では極端に低い成績を示した.
    これらの罹患経験者のうち約半数は治癒しており, 現在も罹患中の人は全体の約25%を占めていた.
    「みずむし」の治療に際して, 一般用薬を使用した人は約12%を占め, うち現在薬を中止している人を除くと現在皮膚科に通院することなく一般用薬のみで自家療法している患者は, 日本全体 (20歳以上70歳未満) では約430万人, 一般用薬の生産量からの推計では330万人であった. さらに, 現在は「みずむし」薬を使用していない人, また「みずむし」薬以外のものを使用した人, 薬は全く使用しなかった人を加算した時の潜在患者数は1,100~1,500万人に達すると推計された.
  • 計盛 幸子, 入船 弘子, 西本 勝太郎
    1985 年 26 巻 3 号 p. 207-211
    発行日: 1985/09/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    71歳男性, 左腰部の, 組織学的に Bowen 病に一致する小結節より, 黒色不完全菌が分離された. 真菌要素は病巣の痂皮上層に多数の菌糸型として存在し, スライド培養および走査型電子顕微鏡による検索により, Exophiala jeanselmei と同定された.
    皮膚の既存病巣の上に腐生的に増殖した黒色不完全菌については, 既に Lazo, Ripponらの報告がみられるが, E. jeanselmei については本報告が初めてのものと思われる. 本症例は腐生的増殖から感染までの間の1つの段階を示すものと考え, 報告した.
  • Evangeline B. Handog, Katsutaro Nishimoto, Kizou Honma, Kyoko Kikitsu
    1985 年 26 巻 3 号 p. 212-215
    発行日: 1985/09/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    A case of primary cutaneous aspergillosis caused by Aspergillus flavus and A. niger in a five and a half month old baby is presented. The lesions appeared following constant contact wear of orthopedic shoes and consisted of vesicles and pustules which are indistinguishable from those of tinea or candidiasis of the sole. The patient was successfully treated with topical application of isoconazole nitrate (Adestan cream®) twice daily for three weeks.
  • 森田 達也, 柳沼 英哉, 小瀬木 幸司, 野沢 義則
    1985 年 26 巻 3 号 p. 216-220
    発行日: 1985/09/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Candida albicans の酵母形 (Y形)→菌糸形 (M形) 変換に伴い, 各細胞を経時的に採取し, これらの細胞から形質膜を分離・精製し, 脂質構成を検討した結果, 形態変換の著しい変換誘導後3時間において, ホスファチジルコリン (PC) とホスファチジルエタノールアミン (PE) はそれぞれ5~10%増加し, ホスファチジルセリン (PS), ホスファチジン酸 (PA) は, およそ10%の減少を示した. また, リン脂質のアシル鎖構成に変動が生じ, PC, PE, PSにおいてはオレイン酸の減少とリノール酸の増加が認められ, 脂肪酸の不飽和度は変換誘導後3時間において最も高い値を示した. 一方, ホスファチジルイノシトール (PI) においては, 他のリン脂質に認められた現象と共にパルミチン酸の増加とそれに伴うパルミトオレイン酸の著しい低下により脂肪酸の不飽和度は最も低い値を示した. これらの結果は C. albicans の二形性変換と膜脂質の間に何らかの関係があることを示唆するものと推測される.
  • 池田 輝雄, 木内 明男, 田渕 清, 凾城 悦司, 岡田 啓延
    1985 年 26 巻 3 号 p. 221-227
    発行日: 1985/09/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    我々は, 牛乳房炎の1例から本邦で初めて Prototheca zopfii を分離した.
    本症例は発熱を伴う感染分房の発赤・腫脹・硬結に始まり, 右前・左後分房から7ヵ月間にわたり Prototheca が分離された難治性の乳房炎であった.
    この原因となった P. zopfii はSDAによく発育し, 集落は白色酵母様を示した. 増殖は Chlorella 属にきわめて類似する autospore formation を示した. 資化試験においては, glucose, glycerol, ethanol を資化したが, sucrose, trehalose, n-butanol, n-propanol は資化しなかった.
    参考株である Prototheca とともに, API20Cを用いて分離株の資化試験を実施したところ, 参考株 P. zopfii と同様, glucose, glycerol を資化した.
    本分離株について薬剤感受性試験を行なったところ, SM, KM, AMPH-B, NYSに対して若干の感受性を示した.
    分離株の培養濾液抗原を用いたゲル内沈降反応においては, 本症例の血清との間に明瞭な沈降線を認めた.
    分離株を用いてのマウス感染実験では, 静脈内, 腹腔内, 精巣内接種のいずれにおいても死亡するマウスは認められなかったが, PAS染色による病理組織学的検索において, プレドニゾロン処置マウスの肝臓およびプレドニゾロン処置・未処置マウスの精巣に典型的な P. zopfii の感染像を認めた.
  • 小瀬木 幸司, 柳沼 英哉, 坂野 喜子, 野沢 義則
    1985 年 26 巻 3 号 p. 228-232
    発行日: 1985/09/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Candida albicans 由来の部分精製キチン合成酵素 (膜結合型), 可溶化キチン合成酵素を用い, 新しい核酸ペプチド誘導体であるニッコーマイシン (Nikkomycin) のキチン合成酵素阻害の効果をポリオキシンD, アムホテリシンBと比較検討した.
    可溶化キチン合成酵素に対するニッコーマイシンの50%阻害濃度は, 0.12μMと最も強い阻害効果を有し, つぎにポリオキシンDの1.0μMであった. 一方, アムホテリシンBの50%阻害濃度を明らかにすることはできなかった. ニッコーマイシンは, ポリオキシンDと同様に部分精製キチン合成酵素, 可溶化キチン合成酵素のいずれに対しても阻害効果が認められたが, アンホテリシンBは可溶化キチン合成酵素に対して全く阻害効果を示さなかった. このことからニッコーマイシンの阻害効果は, ポリオキシンDに類似した作用機作であると推定される.
    つぎに, ニッコーマイシンによる阻害作用のキネティクスを検討し, ポリオキシンDと比較した. その結果, ニッコーマイシンのKi値は0.12μMであり, ポリオキシンDと同様に, 基質であるUDP-N-アセチル-D-グルコサミンとの拮抗により阻害効果を示すことが明らかとなった.
    これらの事実からニッコーマイシンは, キチン合成酵素に対して特異的な阻害効果を示し, 臨床応用が期待される新しい抗生物質であると言える.
  • 村田 久雄, 飯島 肇, 直江 史郎, 跡部 俊彦
    1985 年 26 巻 3 号 p. 233-237
    発行日: 1985/09/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    川崎病患児では, その急性期に一過性のIgE抗体上昇がみられることが知られている.
    我々はこれまでに作成し得たカンジダによるマウスの実験的動脈炎モデルにおける, 抗カンジダIgE抗体量を, PCAの手法を用いて測定すると共に, 動脈炎発生頻度との関連性を検討した. その結果, この血管炎モデルにおいても, 抗カンジダIgE抗体が証明され (PCA価1), この際, カンジダ抗原に百日咳菌ワクチンを添加, 感作すると同IgE抗体が増強されることを認めた. しかし, この百日咳菌ワクチンのIgE抗体増強効果は, その接種時期により異なり, 抗原の第1次接種時に添加, 免疫された群 (PCA価80) は, 第2次接種時に添加, 免疫された群 (PCA価10) に比し, 遙かに高いIgE抗体価を示した. また, 動脈炎の発生頻度は, それぞれの免疫群で40, 87及び55%と, PCA価と平行した発生率を示した. これに反し, 抗原を第2次接種時に1 roundのみ接種した群では, PCA及び動脈炎の発生は何れも陰性であった. これらの成績はIgE抗体と動脈炎発生との間に, 何らかの関連性が存在するものと考える.
    また, IgE抗体価の経時的推移を検索した結果, その存在は抗原接種後3日でみられ (PCA価20), 10日でピークに達し (PCA価80), 24日には急激に減少した (PCA 1). これは川崎病患児にみられるIgE抗体の経時的推移と類似するものと思われる.
  • 光顕的検討
    松尾 茂
    1985 年 26 巻 3 号 p. 238-248
    発行日: 1985/09/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Candida albicans の酵母形細胞の生菌および死菌浮遊液 (108個/ml, 0.1ml) をそれぞれモルモットの皮内に接種し, 真菌細胞の変化ならびに表皮・真皮の反応態度を経時的に組織学的に観察した. その結果, 次のことが明らかになった. (1) 生菌, 死菌共に in vivo で強い好中球走化性を示し, その程度は生菌に強くみられた. (2) 生菌では接種後早期から発芽がみられるが, 発芽の程度は浸潤する好中球の量に逆比例した. 浸潤細胞巣では, 真菌の変性や貪食像がみられた. (3) 生菌では, 真菌要素を取り囲む二層構造を呈する膿瘍の形成が特徴的であり, これを上皮が取り囲み皮表に排出する様式, すなわち transepithelial elimination により真菌要素の大部分が皮内から除去された. 残存する真菌要素は組織球, 巨細胞の貪食により処理された. (4) 死菌は組織球の貪食により処理され, 上皮の大きな変化はみられなかった.
    以上より, 皮内に接種された Candida albicans の生菌は, 死菌と異なり浸潤細胞と上皮の双方の作用により処理され, これらが機能している限り感染が成立しにくいことが示唆された. また, transepithelial elimination の機序としては, 隣接する毛包上皮が連結して膿瘍を取り囲む点が特記される.
  • 小林 一夫, 発地 雅夫, 上條与 司昌
    1985 年 26 巻 3 号 p. 249-253
    発行日: 1985/09/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    45歳, 女性. 5年前から原因不明の発熱と頭痛があったが, 仕事に従事していた. 1年前, 39℃の発熱と左肘関節痛があり, さらに胸部X線で左上肺野に類円形の浸潤影が指摘された. 血沈も亢進していたので肺結核と診断され, 抗結核剤と抗生物質が投与されたが, 改善されなかった. 気管支造影により, 左B1+2cやB1+2bの一部に紡錘形の気管支拡張があり, 左肺上葉切除が行われた. その後の経過は良好である.
    切除肺組織では, B1+2cやB1+2bの一部にやはり紡錘形の気管支拡張があり, 粘膜面は潰瘍を形成し, 慢性気管支炎の像を呈していた. 内腔には Aspergillus の菌糸が存在し, 壁の炎症巣では, Aspergillus の菌要素が多核巨細胞によって貪食されている像もあった. また, これら気管支の中枢側と末梢側に狭窄があり, さらにその末梢枝に同菌糸の充満している部分があった. しかし, 結核性病巣や空洞はなかった.
    本例の背景に全身的な防御能の低下や喘息などのアレルギー状態もなく, いわゆるアレルギー型の肺アスペルギルス症の組織所見には相当しない. 病巣がやや多発しているが, 局所的な気管支粘膜の障害を足場に Aspergillus が生着して, 一次的な気管支肺アスペルギルス症が成立したものと考えられる. このような症例から, 先行疾患の空洞を足場にしない, いわゆる一次性の aspergilloma が形成される可能性も考えられる.
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