真菌と真菌症
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皮内接種 Candida albicans に対するモルモット皮膚の形態学的挙動
光顕的検討
松尾 茂
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1985 年 26 巻 3 号 p. 238-248

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抄録
Candida albicans の酵母形細胞の生菌および死菌浮遊液 (108個/ml, 0.1ml) をそれぞれモルモットの皮内に接種し, 真菌細胞の変化ならびに表皮・真皮の反応態度を経時的に組織学的に観察した. その結果, 次のことが明らかになった. (1) 生菌, 死菌共に in vivo で強い好中球走化性を示し, その程度は生菌に強くみられた. (2) 生菌では接種後早期から発芽がみられるが, 発芽の程度は浸潤する好中球の量に逆比例した. 浸潤細胞巣では, 真菌の変性や貪食像がみられた. (3) 生菌では, 真菌要素を取り囲む二層構造を呈する膿瘍の形成が特徴的であり, これを上皮が取り囲み皮表に排出する様式, すなわち transepithelial elimination により真菌要素の大部分が皮内から除去された. 残存する真菌要素は組織球, 巨細胞の貪食により処理された. (4) 死菌は組織球の貪食により処理され, 上皮の大きな変化はみられなかった.
以上より, 皮内に接種された Candida albicans の生菌は, 死菌と異なり浸潤細胞と上皮の双方の作用により処理され, これらが機能している限り感染が成立しにくいことが示唆された. また, transepithelial elimination の機序としては, 隣接する毛包上皮が連結して膿瘍を取り囲む点が特記される.
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© 日本医真菌学会
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