抄録
食品衛生学的に市販豆腐の真菌汚染を調査したところ多数の黒色不完全菌類が検出された.すなわち, 供試した市販豆腐のうち, 充填包装品は全検体とも真菌が検出されなかったのに対し, 水入り包装品では “木綿” 豆腐および “絹ごし” 豆腐とも真菌の検出率, 検出数とも著しく高く, しかも分離された糸状菌について同定を行ったところ, Exophiala属, Lecythophora属, Phoma属などの黒色不完全菌類が優先菌であることを認めた.とくに前2属ではE. moniliae, E. dermatitidis, E. jeanselmei, L. hoffmanniiなどのヒト病原性菌が多数含まれ, 食品衛生学上のみならず, 黒色真菌感染症の疫学上からも注目すべき結果を得た.