7株の患者由来
Cryptococcus neoformansを用い, 莢膜の厚さ, 並びに脳内, 静脈内, 腹腔内の各種接種経路によってマウスへの致死的効果がどのように異なるか検討した.この結果, 感染致死毒力は菌株間で様々に異なること, しかし, 莢膜形成能と毒力とは相関しないことが示された.
次に, 比較的高い感染致死毒力を示した2株を選び, 経鼻接種による気道感染モデルを作製し, 肺及び脳の経時的定量培養法による臓器内生菌数の推移並びに肺病変の病理組織学的変化について検討した.各種の接種経路で最も高い感染致死毒力を示した菌株では, 経鼻接種後肺組織内の生菌数は漸増し, 脳病変の成立に至る致死的感染が成立した.組織学的にも, 肺胞内での菌増殖が著しく, 肺胞腔の高度の拡張や血管壁, 気管支壁の破壊が認められた.しかし, いずれの時期でも組織球を主体とした炎症細胞反応は比較的軽度であった.これに対して, 脳内接種の場合に限って高い感染致死毒力を示し, 高度の莢膜形成能を有する菌株では, より早期から組織球の反応がみられ, 肺胞内の菌を取り囲む肉芽腫性病変が成立した.肺組織内生菌数も漸減し接種後44日目には, 測定限界以下となった.
以上の結果から, 攻撃菌として用いた菌株によって肺胞に到達する菌に対する食細胞系を主とした反応様式に, 明らかな相違が見いだされた.
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