抄録
モルモット足底に Trichophyton mentagrophytes の分節胞子を接種し, 感染に必要な菌量, 感染初期の菌侵入過程, その後の感染経過を調べた.
50%最小感染価は好人株NTM-105では分節胞子だと280個, 小分生子だと315個, 好獣株SM-110では分節胞子で80個であった. いずれの菌株でも分節胞子5×103個の接種により確実に感染が成立した. また, 50個の分節胞子接種でもモルモット足底に感染が成立しえた.
感染初期の菌侵入をNTM-105株で調べた. 接種6時間後には分節胞子の一部が発芽し, 12時間後には角層細胞に菌糸が侵入するのが走査電顕で観察された. 光顕的には1日後には角層内に菌は認められなかったが, 3日後には角層の上1/3に, 7日後には2/3に侵入した.
その後の感染経過はNTM-105, SM-110両菌株で調べた. 好人株NTM-105では感染菌の侵入は角層の上2/3に限られ炎症症状は認められなかった. 一方これとは対照的に, 好獣株SM-110では菌は角層全層, 顆粒層直上まで侵入し炎症性組織反応が認められた. その後, 長期間 (SM-110:~6ヵ月,NTM-105:~1年) にわたり感染菌の動態を調べたが自然治癒は全く認められなかった.
上記のごとくモルモットで再現可能となった足白癬はヒトの足白癬を実験的に解析するのに有用と考えられる.