超音波医学
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原著
超音波像における辺縁情報の定量化
伊東 正安長野 智章関口 恵夢椎名 毅森 秀明東野 英利子
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2006 年 33 巻 3 号 p. 329-339

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抄録
本稿では超音波像における異常組織の自動輪郭抽出を目的として, 散乱体分布の変化を示す対数圧縮K分布の特性と画像の局所情報を用いた領域の識別の2手法を融合させて輪郭を抽出する手法を提案する. 特に辺縁を議論するには輪郭や境界を特定することが重要になるので, 精度のよい輪郭を抽出するのにこの融合手法は有効であった. 異常組織は対数圧縮K分布と対数圧縮Rayleigh分布の分散比から推定した. 組織辺縁の情報には画像から得られる形態的な特徴と統計的特徴が考えられる. 乳腺超音波像の抽出した輪郭に対して, 診断基準に見られる円形度, 縦横比, 境界の凹凸の度合いを計算した. また辺縁の特徴を表す指標として境界の平均濃度勾配, 境界を挟む2近傍領域間の (平均) 分離度と (平均) クラス間分散, 内部エコー領域の面積の平均と面積の分散を計算した. 抽出した輪郭が腫瘍の断面とほぼ一致すると判断できた24例に対し, 嚢胞, 繊維腺腫および癌に対して, 前述した辺縁情報の定量化を行った. 縦横比と輪郭の凹凸は腺維腺腫より癌の方がより大きな値を有していた. また輪郭内外の濃度勾配と輪郭近傍のクラス間分散は腺維腺腫が癌よりも大きく, 特に濃度勾配の差は大きい. 腫瘍の良性, 悪性とそれらの所見に対し, 輪郭辺縁の定量化が可能になり, 得られる指標も有効であることが分かった.
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© 2006 一般社団法人 日本超音波医学会
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