抄録
当院消化器外科で切除された膵嚢胞性腫瘍32例について, その臨床像, 画像所見, 特に超音波像と病理所見を検討した. 32例の内訳は膵管内乳頭粘液性腫瘍 (IPMN) 26例と粘液性嚢胞腫瘍(MCN) 6例. IPMNは主膵管型8例, 分枝型18例で, 腺癌16例, 境界病変1例, 腺腫9例, 平均年齢65.8歳, 高齢男性の膵頭部に多く見られた. MCNは腺癌3例, 腺腫3例, 平均年齢55.0歳, 全例女性で膵体尾部に見られた. IPMNでは分枝膵管拡張を伴ったものは多房性嚢胞像を呈し, 壁在結節像を認めた20例中15例ならびに主膵管径が6mm以上の13例中12例が腺癌もしくは境界病変であった. MCNでは単房性は1例のみで残りの5例は多房性で共通の被膜像で囲まれた形態を示した. 壁在結節は, 6例中4例に認められ, その内3例が腺癌で, 1例は壊死組織であった. 膵嚢胞性腫瘍では, 壁在結節像の有無が良悪性の鑑別に重要な所見であり, 加えてIPMNでは6mm以上の主膵管拡張は癌の存在を強く示唆する所見であった.