超音波医学
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原著
左房拡大を伴う急性冠症候群患者における僧帽弁輪部心房収縮速度波の心事故予測の有用性
松浦 秀哲山田 晶杉本 邦彦大平 佳美高橋 礼子杉本 恵子尾崎 行男岩瀬 正嗣石川 隆志石井 潤一
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2010 年 37 巻 5 号 p. 577-585

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抄録

目的:左房容積係数(left atrial volume index: LAVI)は,左室拡張能の低下に伴う左室充満圧上昇により増大することに加えて,急性心筋梗塞患者の予後評価に有効であることが報告されている.また,組織ドプラエコー法を用いた僧帽弁輪部心房収縮速度波(A’)が,心房機能を反映することが報告されている.今回A’により,心事故発生を層別化出来るか否かを,左房拡大の有無を踏まえて検討を行った.対象と方法:対象は,当院CCUに入院した急性冠症候群(acute coronary syndrome: ACS)患者のうち,心房細動,心房粗動及び中等度以上の僧帽弁疾患を除外した連続212例(平均年齢64歳,男性166例).心臓死及び心不全による再入院を心事故と定義して,平均508日間の経過観察を行った.対象を左房拡大(LAVI≥32ml/m2)62例と非拡大150例の2群に分類し,検討した.結果:経過観察期間中に17例(死亡8例,心不全による再入院9例)の心事故が発生した.ROC曲線からA’のカットオフ値を10.7 cm/secに設定した.全例及び左房拡大例においては,A’≥10.7cm/secの群で心事故回避率が有意に高値であった.結論:左房拡大を伴うACS患者において,A’は心事故予測に有用である.

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© 2010 一般社団法人 日本超音波医学会
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