超音波医学
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総説
壁運動評価の達人になる
岩倉 克臣
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2012 年 39 巻 4 号 p. 409-421

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抄録

壁運動の評価は心エコー検査の基本であるが,苦手意識を持つ初心者も少なくない.その原因としては壁運動自体を観察・評価することの難しさと,結果の解釈の難しさがあるように思われる.前者の克服のためには正しい評価法を覚えるとともに,エコー像の描出が不良な症例への対策が重要である.エコー装置の設定を調節したり(低い発信周波数を使う,みやすいようにゲインを調節する,超音波焦点を移動するなど),被検者へのアプローチを工夫する(呼気位での息止め,みえやすいエコーウインドを探すなど)ことで対応する.後者については,虚血性心疾患の場合では冠動脈の各枝が左室のどの領域を支配しているかを,冠動脈の解剖学的走行に合わせて理解することが基本である.急性心筋梗塞での壁運動異常を精緻に解釈することで解剖学的な構造がより分かりやすくなる.急性心筋梗塞では責任病変以降の血管に支配された領域にのみ壁運動異常が出現する.そこで壁運動異常が冠動脈のどの血管で支配されている領域に認められているかを正しく評価することで,責任病変の部位が分かる.さらに,梗塞周辺部の壁運動異常の程度を観察することで,側副血流の程度や責任病変部位の閉塞の程度などが推定できる場合もある.このような解釈を行うことで壁運動をより正しく理解できるようになる.本稿では以上のような点について日常での検査に応用できるように述べる.

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© 2012 一般社団法人 日本超音波医学会
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