2012 年 39 巻 4 号 p. 423-447
乳房疾患はその種類が多く,特に良性疾患は多岐にわたる.乳腺症は臨床情報を加味せず画像所見のみで診断するのは,超音波検査で嚢胞を検出したとき確定診断できる以外,非常に難しい.良性と診断しやすいものに線維腺腫,腺腫,過誤腫,脂肪腫,脂肪壊死症,血管脂肪腫,乳腺線維症,乳瘤,女性化乳房症がある.悪性との鑑別に注意を要すものに放射状瘢痕,乳管内乳頭腫,嚢胞内乳頭腫,乳管腺腫,乳頭部腺腫がある.良悪の境界病変は,葉状腫瘍,cystic hypersecretory hyperplasia,異型乳管過形成,mucocele-like tumorがある.炎症性疾患を除いた主な乳房の良性疾患と境界病変の臨床像,病理像と対比した超音波診断を個々の疾患について,マンモグラフィやMRIなど他の画像診断も加味しつつ記載した.乳房疾患の良悪性の判定に際して,超音波診断が非常に大きな役割を果たしていることが分かる.