抄録
目的:超音波ドプラ法による最大流速測定における計測誤差を回避するため,プローブの補正角度は60度以内に設定する必要があるとされている.しかし,たとえ60度以下の角度補正でも測定値は実際の流速よりも過大評価になってしまうことが指摘されている.今回,我々は角度補正に伴う最大流速測定値の過大評価について追試を行った.方法:糸ファントム駆動装置を水中に設置し,糸ファントムを100cm/sの一定した移動速度で駆動させた.糸ファントムを超音波装置のリニア型プローブを用いて補正角度を45度,50度,60度になるようにした.角度設定の不正確さによる計測誤差が出現しないようにプローブを固定した状態で,各々の補正角度で糸ファントムの移動速度を3回ずつ測定した.結果:各最大移動速度の平均値は補正角度45度で120.1cm/s,50度で124.2cm/s,60度で135.2cm/sであった.補正角度が45度でも約20%の過大評価となり,補正角度が大きくなるにつれて過大評価となった.結語:角度補正が60度以下でも,最大流速の測定値は過大評価になっていると考えられる.