2014 年 41 巻 6 号 p. 835-843
目的:本研究の目的は大動脈弁石灰化(aortic valve calcification: AVC)と胸部上行大動脈(thoracic ascending aorta: TAA)近位部の硬度上昇との関係を明らかにし,それらの左室(left ventricular: LV)機能および腎機能に対する影響を調べることである.方法:糖尿病32人,脂質異常症60人を含む計138人の高血圧患者をAVCの重症度に応じて4群に分けた.TAA近位部の弾性度を組織ドプライメージング法に基づいて計測したストレインレートの指標(最大ストレインレート値[SR(+)],最小SR値[SR(-)]およびQRSピークからTAA近位部SR(-)までの時間〔SRT〕)を分析した.結果:SR(+)およびSRTは中等度のAVCを有する患者で軽度のAVCを有する患者よりも有意に高値であった.SRTおよびSR(-)は年齢,大動脈弁位での最大血流速度,TAA壁の厚さ(IMC),左室拡張能および腎機能とよく相関した.SRTはIMC,脂質異常症および左室拡張機能と独立した相関を認めた.結論:AVCの重症度はTAA近位部の弾性度と相関が認められた.SR指標はAVCを有する患者においてTAAの硬度と左室機能および腎機能との関係を評価するのに有用である.