抄録
目的:In vivoソノポレーションに向けた基礎研究として,硬さが異なる足場上に単層培養した細胞のソノポレーションにより生じる細胞膜損傷率を検討した.方法:コラーゲンゲル,10%,30%アクリルアミドゲル,およびカバーガラスを用いて作成した4種類の細胞培養足場を単層細胞の培養に用いた.原子間力顕微鏡を用いて測定したヤング率はゲル足場では0.09‐8.6 kPa,生細胞では4.5 kPaであった.波数3,100および10,000波でピーク正圧/負圧が8.0/-1.3 MPaのパルス超音波を微小気泡が付着した細胞に1回のみ照射した.結果:Propidium iodideを用いて細胞膜損傷を蛍光顕微鏡により可視化した.波数3波の超音波パルスでは有意な変化は見られなかったが,波数100および10,000波のパルスではヤング率の増加に伴い損傷が増加する明確な傾向が確認された.結論:実験結果より,接着細胞の下層にある足場層の硬さをソノポレーション条件の重要なパラメータとして考慮に入れる必要があること,またin vivoソノポレーションに対する最適照射条件は生体組織の物理的特性を考慮して決定すべきであることが示唆された.