超音波医学
Online ISSN : 1881-9311
Print ISSN : 1346-1176
ISSN-L : 1346-1176
原著
駆出率の低下した左室において駆出期における渦の持続時間は延長する:vector flow mappingによる解析
福田 延昭板谷 慶一木村 公一海老原 文根岸 一明宇野 漢成宮地 鑑倉林 正彦竹中 克
著者情報
ジャーナル 認証あり

2016 年 43 巻 2 号 p. 291-301

詳細
抄録
目的:カラードプラおよびスペックルトラッキングデータに基づいた新方式のvector flow mapping(VFM)によって左室内の渦流発生を可視化することができる.本研究の目的はVFMを用いて駆出期中の渦流の重要性を検討することである.対象および方法:80人を対象(正常20名,拡張型心筋症29名および陳旧性心筋梗塞31名)としてカラードプラ画像を記録してVFM解析を行った.左室渦流の持続時間を計測し,駆出時間に対する比(VTRe)として評価した.結果:VTReはEDV(ρ = 0.672,p < 0.001),ESV (ρ = 0.772,p < 0.001),EF(ρ =-0.783,p < 0.001),左房径(Lad)(ρ = 0.302,p = 0.007),一回拍出量(ρ =-0.600,p < 0.001),e’(ρ =-0.389,p < 0.001),a’(ρ =-0.314,p = 0.005),s’(ρ =-0.512,p < 0.001)およびE/e’ (ρ = 0.330,p = 0.003)と有意な相関を示した.EFによって補正した場合には拡張期パラメータ(e’,a’,E/e’およびLAd)とは相関を認めなかった.結論:正常の左室では渦流は駆出早期の限られた時間にのみ存在した.対照的に,EFが低くなるほどより長く収縮期中の渦流は持続した.VFMによる渦流の評価は心機能障害の病態生理における新たな知見を非侵襲的にもたらす可能性がある.
著者関連情報
© 2016 一般社団法人 日本超音波医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top